第66話 小白

 お祭りから三週間が経ちました。

 明日からはなんと夏休みです。

 わたしが寝ている間、色々なことがあったそうです。

 学校の屋上では殺人犯の人が細工をして大きなガス爆発を起こしたりして大変だったみたいです。

 どうやらその人はその場で亡くなったみたいです。

 あとでお兄ちゃんの友達だと聞いてびっくりしました。

 学校は屋上がぼろぼろになったので工事中ですが、もうすぐ直るそうです。

 シロちゃんも事件に巻き込まれてお腹に破片が刺さってしまいました。

 そのせいで明日まで病院で入院です。

 わたしの心配をよそに「夏休みが伸びてラッキー」と笑ってました。

 でもやっぱりどこか悲しそうなので、毎日お見舞いに行っています。

 普段会わないシロちゃんの両親も駆けつけて心配してくれてます。

 それだけはちょっとよかったなと思います。

 事件当日の記憶はあまりありません。

 先輩と屋台に行ってから、騒ぎが起こり、そこに巻き込まれたわたしは押し倒されて気を失ったそうです。

 気付くと病院のベットで寝ていたのでびっくりしました。

 伯父さんと綾香さんにも心配をかけてしまいました。

 猫ちゃんのお礼を言いたいけど先輩とはあれから会っていません。

 再開した学校にも来てないようです。

 噂では持病が悪化したせいでしばらく学校を休学するそうです。

 とても心配ですし、それを聞いた時はショックでした。

 天馬さんも見るたびにずっと寂しそうにしています。

 先輩のいない通学路はどこか物寂しいです。

 早く病気がよくなってまた学校に来て欲しいです。

 シロちゃんが退院したら雲龍神社に一緒に行く予定です。

 先輩と会えるといいな。

 

「それから、えっと、えっと・・・・・・」

 朝、小白は仏壇に手を合わせていた。

 家族の遺影に報告するのが毎朝の日課だ。

 だがこれ以上思いつかず、小白はニコリと笑った。

「いってきます」

 家を出た小白は北にある丘を見上げた。

 青空の中に小さくだが雲龍神社が見える。

 なんだか社が見守ってくれているようで小白はこの光景を見るといつも幸せになった。

 小白の鞄には社が入院中に届けてくれたお守りが揺れていた。


                   おわり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

そして闇を抱く 古城エフ @yubiwasyokunin

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ