三国ファイブ(仮)

だいきち

第1話 プロローグ

 瓦礫に腰掛け、足下に広がる黒い穴をぼ~っと見下ろしていた。


 一ヶ月前、この穴から悪鬼どもがやって来て日本を蹂躙した。

 今でも続いている。

 

地震のような地響きとともにそれは出現した。 



 中から、無数の、妖怪、魔物、アンデットというような悪鬼たちが現れて次々に町を蹂躙していった。


 欲望に従うようにやつらは、貪りつくした。


私の妻も娘たちも。


一瞬の出来事で、悲しみはなかった。

 

 パパのお嫁さんになる!


 だ~め、お嫁さんはママひとりだけなの~。

 

 という時期もあったのだが、今は惰性で仕事をしている毎日だった。


 私は、生きていくため、家族のため、したくもない仕事を続けていた。


 地元の信用金庫だったが、支店長になれず課長止まりでだった。


 ゴルフで上役とのパイプを作ったり、おべっかを使ったりするのが得意じゃなかった。


 それよりも、アニメやラノベゲーム、ビデオなどにはまっていた、隠れオタクって言うのだろうか。

 もともと、読書が好きな、自称文学少年だったからな。


 若い頃は、会社の期待の星だと言われ、得意でない営業の勉強をし、実績を表彰されたこともあったなあ。


 後輩たちに、先をこされるようになってから、アニメやゲームで、現実逃避をしていたんだろうと思う。

 

 

 

 今は、この穴からは悪鬼たちは出てきていない。


 底の見えない暗闇だけがそこに広がっている。


 私のまわりには、悪鬼たちの体液や血のこびりついた瓦礫、食い残しの死体が広がっている。

 鉄と硝煙、死の臭いの中にいる。


 悪鬼たちは、新たな獲物を求めて蹂躙範囲を広めているのだろうか?


ここには、戻って来ていない。

わたし一人だけ取り残されちまったようだ。



「ワン!」 

 

 足元の黒犬が吠える。



 最後に残った私の家族だ。



 名前をクロと言って、娘が拾ってきて無理やり飼わされた。


 世話してたのは、最初の1ヶ月だけで、そのあとは私が3年間面倒を見ている。


 私に一番なついていて、彼女のもふもふの黒毛に癒されている。

 尻尾を振って、私を見つめる瞳がかわいらしい。

 生まれ変わったら、私の嫁さんになるんだぞ!

 などど、バカなことを考えていたりしていた。


いつものように、もふもふしてやると尻尾をぱたぱたと振る。

癒されるな~


「ワワン、ワン!」


クロが空に向けて吠える。


ゴゴゴゴゴゴ~


上空から、見たこともないブイトール機が降りてくる。


ブオーーー!

プシューーン!


金属の扉が開いた。


 中から、最新の戦闘スーツを着こんだ人物が降りてくる。 


 映画「スターなんちゃら」の、白い兵士のような格好だ。


4人の兵士が、順番に降りてくる。


「ここで、何をしているのですか?

逃げ遅れたのですか?」


ヘルメット越しなので、機械的な声に聞こえる。


「・・・・」


突然のことで、なんと答えて良いかかわからなかった。

ちょっと、びびっていた。

もともと、血液型A型の、臆病者だからな。


4人は、ヘルメットを脱ぎもう一度たずねてきた。


「生き残ったのですか?

 襲われなかったのですか?」



「はい、こいつが逃げ出したので


追っかけてたら転んでしまって 

 

やつらが出てきたときには、

うまい具合に隠れられてたからかもしれません。」

 得意そうに、尻尾を振っているクロを指差す。




「うーん。

 運良く助かったということか?」



ゴニョゴニョと話し合う4人。


「じゃ、行こうか。」


 リーダー格の、イケメンがブイトール機を指差す。


 救助に来てくれたのか。

 ついてるな。

 そろそろ、食べられる飯探すのも辛くなってきたからな。


 

 俺たちは、ブイトールに乗り込んだ。



ゴゴゴゴゴゴ



クロは、オレ膝で小さくなって、ぶるぶる震えてる。

 しょうがないよな~。音でかいもんな~。


外を見ると、黒い大きな穴が近づいている。






「えっ?」



 

 ブイトール機は、黒い穴に突っ込んでいった。








「えっ!まじっ?」





「突入成功!」

兵士の一人が、通信機で報告した。




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三国ファイブ(仮) だいきち @daikiti777

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