満員電車の中では、よく走馬灯を見る。

フランク大宰

第1話

 そう、俺は満員電車の中で、よく走馬灯を見る。


  俺は半蔵門線で出勤し帰宅する。


あの人混みの中、エゴとエゴのぶつかり合いが起きる。しかも実際に体をぶつけ合うんだ。


  なぁ、今度、オリンピックやるんだろ?


あれを正式種目にすりゃー日本は銀かパール


のメダルは確実にもらえるだろうよ。


メダルは“ぶっちょう面”のエゴイストどもに、満員電車の中で青いジャケットを着た、オリンピック委員会のやつらが、これまた


不機嫌にわたすんだ、傑作だろ?


 え、判定基準?


さぁな、考えてなかった。この二杯目の茶色い水のせいで頭が回らないんだよ。


 まーあれだろ、どんだけエゴイストが多いかとかどんだけの選手が、心のなかに“廃工場”


を抱えているかじゃねぇか。


  


   そうそう、それでよ


最近俺は“あそこ”にいると走馬灯を見るんだよ。灼熱の体温の造り出した、地獄のような“あそこ”で。揺れはまるで三途の川を木船で渡るときのような気にさせる。


 “あそこ”で俺は走馬灯を見る。


  前はさ、昔のことが頭によぎったよ。


ガキの頃、公園でやけにはしゃいで、ジャングルジムったか?


あれから、飛び降りて骨折ったこととか、


中学時代の失恋、高校時代の失恋、


あれよ、あれよ、と過ぎ去った大学時代のこととかよ。


ああ、勿論、かみさんと結婚したこととか、


派手さのない結婚生活のこととか、かみさんが流産したこととか、まぁそう、いろいろな。


 会社での出来事も見るよ、“どやされどやし”


“頭を下げ下げさせる”つまらん事の連続、


 


 だけどよ、来ないだの走馬灯は変わってたんだよ、満員電車の中にいる俺が見えたんだ。


俺は電車の天井の電球を“ぼっと”見てたんだ。走馬灯の中で走馬灯を見ている俺を見たんだよ。


 そしたらよ、走馬灯の中に女が出てきたんだ。


え?ああ、申し訳ない分かりにくいだろ、でも俺だってよくわかんないんだけどよ。


でな、その女っていうのは見たことのないぐらいの美人でさ、アジア人だったんだけども、何人かな?日本人ではない気がするな、


したら、女が言うんだ、「金メダルは貴方よ」って


  


 よく見るとその女、青いジャケット着てたんだよ。






  


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満員電車の中では、よく走馬灯を見る。 フランク大宰 @frankdazai1995

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