願うさきに

糸花てと

第1話

 神様が通るとされる道に、平気で立ってみる。

 御守り、おみくじ。

 御朱印、絵馬。


 正直、身近すぎてありがたみが無い。親に言われるから、箒をもって掃き掃除。自らやるなんて、絶対にない。


 物心ついた時から、月に幾つか行事があって。学校を休んだり、友達との約束も断ったりした。

 中学に上がってからは、学業を優先しなさいって行事をやらなくて済んでるから、いい親ではあるのかな。


 受験シーズンとか、初詣とか。神様を信じてるから来るんだよね?


「かみさまって、いるの?」


 ……びっくりした。考え事に夢中で。小学校に上がりたて? ちいさな参拝者。

 それにしても、タイムリーな質問だ。わたしが聞きたいよ。

 親によく言われたっけ──“タイミング良いと思う出来事や、心に引っ掛かって考えたいことは、神様からの試練なのよ”って。


 学校という、大人にとっては狭いかもしれない。でもそこが、わたし達の社会で。

 そのなかで見つけた考えと、親の考えに揺れる。


 なにが正解なのか、一部がダメでも通らなきゃいけない事とか──


「居るって思えば、いるのかも」


「なにそれ~」


 ほんと、なにそれ。だよね……


「神様にさ、カッコいいところ見せようよ。そしたら、応援するねって言ってくれるかも」


「そうなのかな?」


「そうだと思うよ」


 キラキラ、まっすぐな笑顔。

 これで良かったのかな? 自分のやり方次第って言ってるようなものなのに。




「──わぁっ…風」


 身体をもってかれるくらい、強い風。木々の葉が揺れる、地面の葉が舞い上がる。

 ……いるのかも。って、伝えたあとに吹いた風。これもタイミングが良かったりするの?


「まさかね……春一番だよ」


 いないって思ってても、これだけ考えるんだから。本当は、信じたいんだよなー。


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