三日目 ルイス視点

 AAクラス(通称ダブルクラス)。

 ベータギルドの【アスタロット姉弟】と言えば有名だ。

 姉の名はルイス、弟の名はディオン。


 そんな私達は今、ナンパされている。


「なぁ、いいだろ? 今から宿屋に行こうぜ? な?」


(一度一緒に依頼を受けたからって調子に乗って……)


 そもそも、私だけならともかく弟のディオンまでナンパするとは……。

 確かに弟は”私に似て”(ここ重要)可愛いけど……。


「ル、ルイス姉ぇ……」


「もう、あんたも強いんだからそんな女々しくしないの……」


「でも……」


 なんでこの子はこんなに女々しいのかしら。

 本気を出せばこの街でも5本の指に入るのに……。


「なぁ、いいだろ? なぁなぁなぁ?」


(いいわけねぇだろ。ぶっ飛ばすぞ雑魚が)


 と、心の中で怒りをぶつけるが表には出さない。

 AAクラスは街の顔役でもある。そんな私達が人通りの多い場所で怒ったりなんかしたら悪い噂がたってしまう。


「ごめんなさいね。生憎私達、この後用事があるの」


「なんだよぉ。すっぽかして俺と遊ぼうぜ」


(しつこい……一発くらい殴ってもいいかな)


 いや、だめだめ、落ち着け私ぃ。

 でも、次断っても誘われたら周りに見えないように魔法で攻撃しよう。


「おい、おまえ」


「なんだァてめェ?」


(ふん、ヒーロー気取りの男まで来ちゃったわね。めんどくさい)


 全く、助けたお礼にお茶とかに誘われたらたちが悪いのよ。

 いくら、私達が”可愛い”(ここ重要)からって男ってやつは――。


 私が助けようとしている男の方を見ると、そこには見た事も無いような精霊を連れ、日本の刀を腰に差した黒髪黒目の男が立っていた。


「え、あ、い、あ、ご、ごめんさい……!!」


「え、なんで謝る?(俺、なんかしちゃった!?)」


 周りにいる精霊の数もおかしい、何十、何百? 私達の精霊まで騒ぎ出している。

 弟が驚いて気が動転してしまっているのも仕方ないだろう。


「な、なんだよお前! 俺に何か言いたい事でもあるのか!? 俺はこの街のAクラス冒険者だぞ!!」


「あぁ、そうか(唐突な自分語り! 受け流すのが吉だな)」


 こいつ、Aクラスを見て「そうか」だけって、AAクラスに比べれば珍しくないけど、それでも国に二十も居ないAクラス相手にその反応……。

 Aクラスのナンパ男も予想外の反応に面食らってる。


「え、それだけっすか……」


「俺には関係ないからな(道教えに来ただけだし)」


「え、えぇ……」


 俺には関係ない……。その程度のクラスで威張るなと言っているようにしか聞こえない。


(確かに強そうだけど、とんでもない自信家ね)


「Aクラス冒険者、宿ならあちらを真っすぐ行けば着くぞ。一人でも行けるだろう?」


 宿屋の方に指をさしてそう言った。

 確かに宿屋の場所はそちらだが、この街の人間ならそんな事誰でも知っている。

 全く、意地悪な人なのかな?


「う、うぅ……覚えていろよーー!!」


「……(急いでたのかな?)」


 ふふ、なんだかスカッとした。


「ふっ……ふふふ、あなた面白い人ね」


「た、たたた、助けてくれてありがとうございました!」


「当然の事をしたまでだ」


 男はそう言って踵を返してしまった。

 あの男なら、少しくらいお茶しても良かったんだけど。

 本当にただの親切だったみたいね。

 今度会った時、しっかりとお礼をしなくちゃ。

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魔力も剣の才能もないのに勇者になってしまったんだが!? @syun0508

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