いろいろ
汎ユーラシア的に兎は月と関連する。一応。また、月で兎は、臼にたて杵と呼ばれるもので、支那の傳承では薬、日本では餅をついてゐるとされるが、汎ユーラシア的に、兎は害獣であると同時に、穀物の豊穣を約束するなんぞとされる。
南方大先生は、ドイツ或いは英国で、かつて「太陽神としての兎信仰と兎をトーテムとする風習」があって、それの遺風で、太陽の力が復活しだす三月のイースターに、バニー菓子作るのと太陽の復活を指す卵を祭る儀礼ができたのではと言ふ説を展開してゐる。あとそれの傍証で、古代エジプトの上エジプトの15ノモス、ヘルモポリスって言ふけどヘルモポリスいくつもあるよ、各地でトートがトキだったりおさるだったり、何だっけ、そこを宰領せる神であったウヌウが太陽神としての兎である旨を引く。南方大先生も「兎を月気とのみ心得た東洋人には変なことだ」とするが、そのうさ耳の太陽神は女神様の可能性がある。古代のエジプトでは、兎が立つさまを上る太陽に見立てたさうである。
支那では「石勒の時(四世紀)から」黒兎は「水徳の祥」になったさうである。また、スウェーデンでは黒ヘイアは、魔女と関連し、通常の弾丸では死なない(銀か鋼の弾丸ならいいらしい)さうである。サツ矢、シャチ玉と呼ばれる、bulletへスピリチュアルな言訳をつける信仰に基づいた儀礼はいろいろあって、ヒットしたやつを鋳直して南無阿弥陀仏って書いて使ふ弾丸と別個に携帯するとか、使ったら猟師を引退しないといけないとか、鉄の弾丸へ念仏書いたやつを三つ携帯してるとか、妖怪へ撃ち込む際にはこれを使ふとか、ジャパニーズシャチ玉信仰はいろいろあるけどスウェディッシュシャチ玉信仰ってあるの(かう言ふのをかう言ふメディアで書いてる段階で、D&Dを筆頭にある種のモンスター用の矢に関する情報を得てゐたり、しかるべきホラー物で「銀の弾丸」が出てるとかを、知ってるはずなのだが)。アト・ド=ヴリースによれば、黒ラビットを祖霊でめでたいとするイングランドにも「ノウサギは銀の弾丸でないと死なない」と言ふ傳承がある。
兎は、絶倫で、怖がりのため、さらにうさトーテムがその辺にある関係で、なんかの兆しを傳へるメディアと考へられ、さういふ物としての傳承が各地で傳へられてゐる。英国では兎が村の本通りを通るのは火事の前触れで、支那では赤うさを吉兆とする。ほか世界各国で「兎が出ると道を引き返す」系のタブーが多数ある。また、柳田國男大先生は、ウサギを山の禰宜として午前中獲るのを忌む地方があると言ふのを紹介してゐる。支那でアルビノのヘイアを吉祥とするのと対照的に欧州でアルビノ兎は不吉(白は魔女や幽霊の色なので)ださうである。また、欧州では船上でラビットつうか兎を口にする事はタブーと言ふ。同時に、ゲン担ぎの儀礼として月初めにまづ「(白い)ラビット」と言ふ、といふなんかがあるさうである。
兎は洋の東西を問はず奸智に長けて、いろいろ犬とか捕食者を騙くらかすと言はれる。また漫然な読書も表すとされる。『かちかち山』の兎を筆頭に、なんか頭がいいとされる。狡兎伝承はアメリカに結構あった筈であるうえ、しっぱでぃーどぅーだー しっぱでぃいぇー、因幡の素兎伝承のやうな、トリックスターとしての兎はインディアンのマナボーゾーと言ふのがある。
古代エジプトの、オシリスの関係の語ウネン・ネフェルはエルヴェ・マソンによれば「兎としてのオシリス」ださうである。てふか、環東地中海沿岸部では、冥府に野兎がゐるとされる。北米のアルゴンキンの人は、死後、ミチャボと言ふ、兎の形をした至高神の下へ行くと言はれた。ある特定のところで、兎が冥府にゐると言ふなんかがあるらしい。
エルヴェ・マソンはノウサギにデミウルゴス性があると言ってゐるが、その中で、モンゴルの傳承を引いてゐるのだが、他に出てこない。ただ、五行説では卯を貌と同系とし、物が立ち現れるアレを指す。南方熊楠の本で、南米チピウヤン人の、昔、一族がトーテムの形で海上に浮いてゐた頃、兎が「虎王(なほ、實吉達郎大先生によれば、南米でネコ科の野獣は「なんでも「ティグレ」」ださうである)」の宰領せる海底から地べたと言ふものを拾ってきて、各トーテムの皆さんがそれを広げた、その為ティグレは兎を今でも食べる、といふのを収録してはゐる。他がない。
ちゃんとした資料でいいと思ふ、荒俣宏『世界大博物図鑑』によれば、バニーガール(プレイボーイバニーと言ふのはさておいて)の装束、うさ耳とレオタードと足は「プライヴェートな女性」を、カフスとボウタイが「パブリックな男性」を指すさうである。そんでもって件のプレイボーイ誌のウサギは、えーアメリカ人のあれは「勃ってるのがデフォ」なので、ポルノはそれを萎えさせる物ださうである。なので、さう言ふ雑誌の商標たるあの兎さんは、「ソレをぶった切る鋏」を兎化したものださうである。あー。
兎はその構造上、生殖器の近所に睾丸のやうなぷくっとしたものがあったり、クリトリスがでかいので、欧州では両性具有とされ、淫乱である言訳とされた。
狡兎傳承はあるけど、支那ではやはりあれをガン見してゐるわりに、「吐いて生む」ので吐と兎が同音とか、雌が雄の毛をなめて孕むとか月見て孕むとか、いはれる。
マーティン・ガードナーはmarch hareに関する説で、兎は繁殖期中、追っかけ回しの果てに「ボクシング試合」なので、発狂するのは三月に限らないと言ふ説を紹介し、エラスムスの「MarSh hare(沼の兎)」のやうに狂ったと言ふのが訛ったとする。一応、「マーチ・ヘイア」に関しては、草木萌出る三月は、隠れるものがないのでうさぎさんがキレるとされるアレがあった。
支那の文献に「兎の幽霊」を見たと言ふのが出てたり、イスラムの傳承で、うさぎにはアリーの霊が載るものと言はれたりしてゐる。なんかスピリチュアルな物が纏はりつく言訳があるらしい。
兎に関するあれこれ 黒いやかん @kuroinohos
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