生態とか分類とか

 今から九千万年前、ユーラシアと北米大陸を併せた大陸で生まれた一族のうちで、小さい方。齧歯性だけど歯の伸び方とか構造がネズミ系とかなり異なるのでそれとは別個にウサギ目を構成する。あと、これらとおさる系を併せて「真主齧目」を作る。


 そこそこの相違はあるものの、総じて大体、小さくてモフモフし、長い耳を持ち、声帯がなく、後ろ足が発達し、草食と言ふのがこの一族を指す特徴と言って差支へないはず。あ、あと、草を食べて、ざっくり消化した後、栄養のサプリ化したやつをけつから出し、口から再び体に入れる。『レビ記』に「兎、駱駝、ハイラックス これは反芻するが蹄が割れても分かれてもいないのであなた方には穢れた生き物である」とあるが、兎は、芻(Cudと言ふのがー)を、胃袋から食道を介してではなく全消化器官を通してその末端部から反してゐるのでまぁ反芻してると言ひはれる気がする。足は蹄状をしてゐない。


 いろいろ例外を言へば、アマミノクロウサギは後ろ足と耳が小さいし、ナキウサギと言ふ種類は鳴く。なほ、他の諸うさは食道を鳴らして声を上げることがある程度で通常は足ダンと呼ばれる後肢のストンピングによる交信をしてゐるが、シートンはオグロジャックウサギが繁殖期に叫ぶ「クワックワックワッ」と言ふ声、或いはオジロジャックウサギが捕へられた際になく「カーカーカー」と言ふ声を紹介してゐる。あと「トウブワタオウサギは声帯があるが、彼らはそれをなかなか使わない」とある。


 また、北米大陸の沼地とかに生息するヒメヌマチウサギと呼ばれる種類は、積極的に泳ぐ。ちなみに大統領だった時のジミー・カーターさんが、池にボートを浮かべて釣りをしてた際、このヒメヌマチウサギに遭遇した。のちその様が新聞沙汰(タブロイド紙に「カーター大統領VSキラーラビット!!」とかのキャプションで書かれた)になったさうである。彼の当時のアレといろいろを揶揄したものらしい。でもここには多分「アメリカの男は大自然を征服すべし」と言ふマチズモも出てると思ふ。


 野兎の繁殖は八か月くらゐで、しかもオス同士が戦って、戦って、戦って、戦ひ抜いて、勝者がラスボスたるメスとまづ肉弾戦をして、交尾に至る。シートンはオグロジャックノウサギがやるその様について、ヨーロッパのヤブノウサギが「殴り合い 蹴りあう」様を引き、それと同じやうな「サバット(蹴り技とボックスフランセーズと呼ばれる拳闘術が特徴のフランスの武術だけどこれの体系にあるラ・カンと呼ばれる杖術は、兎はやらねぇよなやっぱ)」をやるといって、蹴りあふ様を報告してゐる。その際死者も出るさうである。また、ラビットの繁殖は異常。まう嫌ってくらゐ増える。豪州で、19世紀だかに何羽か放たれたのの子孫が全豪でまだ増えてゐるとかでお察しください。


 皮膚は、野兎は破れやすい。ので捕食者に掴まれた際は逃げやすい。対してじゅくうさ・・・アナウサギは丈夫な皮膚を持つ。荒俣宏『怪物の友』によれば、うさファーだかうさレザーが、戦前の欧米で、黒狐、黒テン、ビーバー、チンチラ、オットセイ(!!)に偽装されたさうである。兎すげー。


兎さんはにんじん食べるので有名であるが、「ネズミやウサギは蕪の皮を残すが穴兎は全部食べる」と言ふ観察例があるさうである。


 あー、筆者が前兎飼ってた際、兎飼ひのプロから「食わすとよい」と言はれたからだか何だか、煮干し喰はせてた。かの草食動物が無表情かつ無心に黙々と乾燥魚を食ふ様は、可愛いと言ふかなんといふか、後になんかトラウマじみた何かが植え付けられた。かう言ふのは家畜としてのウサギが肉を食ふとかの特殊な事例かと思ってゐると、カンジキウサギが魚齧ってたりするのが報告されてゐて、世の中侮れないのである。『兎に関する~』の冒頭で、ノルウェーのウサギがネズミ追っかけるとかあったけどあれは実際の観察例かもしれん。なので北京辺で言はれた「野猫児」と言ふのが。「猫耳ときたらうさ耳」が支那起源である以前に、この二種はカルニヴォアつながりである可能性が。


 ノウサギの巣、バロウは、地べたをちょっと掘った体裁で、ひりだされた時すでに毛が生えてる赤さんが、そこで大人しくしてゐる。ラビットの方は、赤裸の状態で生まれ、ワレンと呼ばれる穴の奥で守られて過ごす。このラビット穴は、その辺のは別にいいのだが、英国は白亜の壁がうさ足で掘れないので、何代も続けて同じ一族が同じワレンに住み続けると言ふ。


 蝦夷ナキウサギは、明治期に発見されたさうである。松ブラウザー(木の葉っぱを抓んで食べる動物)として悪名を馳せてゐたらしい。あと北米のナキウサギは、土人の呼称から学名がprinceps(首長)。彼らは、コケとかも食ふのだが、秋が深まると、その辺の草を刈り取って、干して、巣穴へ突っ込む。その際ちゃんと乾燥させるべく、物が干し草になるまで太陽光のもっとも当たりやすいところへ移動させまくる。賢い。

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