えぴろーぐ(語り手:寒羽良冴子)

 彼女が受け入れようとしていた者。

 それは「パパ」だった。


 なぜパパなのか。

 何があったのか。


 蓮原は、それ以上、追及しなかった。

 重要なのは、彼女に憑りついていたモノが落ちたということで、全てを知る事じゃあないらしい。

 恰好つけてやがる。


 しかし、想像はする。してしまう。

 生死感をぼやかしてまで、受け入れる事を拒否していた事実。性に関して、自暴的な奔放さを見せていた事実。そして、テツオさんが頑なにカオリさんの過去を守ろうとした事実。


 あの時、蓮原の事をテツオさんが「かんべんしてください」と無理やりにでも引っぺがさなかったら、どうなっていたんだろう。蓮原はそこまで見越していたのだろうか。

 

 きっと、テツオさんには優しい嘘が隠れている。そして、カオリさんにはグロテスクで背負い難い十字架が乗っている。


 ああ、なんでこの世界はこんなに生き辛いんだろう。「欲」は「優しさ」を食い物にして太り、「歪」みを産み落とす。


 私もまた、その「歪」ではある。


 まだ、元の姿にはなれそうもない――。


 

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東京妖怪現代絵巻 ~蓮原土蔵事務所(怪)~ @ahab

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