この作品に出てくる痴呆のおじいさんは毎日おばあさんに「僕と結婚してください。一目惚れです」と言います。
それを言われたおばあさんは「ごめんなさい」と答えます。
痴呆で記憶の止まったおじいさん。
そんなおじいさんをそばで支えながら一人だけ新しい記憶を刻み続けてきたおばあさん。
時間軸のズレた二人。その中で抱くそれぞれの想いがどこか切なく悲しい。
だからこそおばあさんは「ごめんなさい」と答える……のだが。
この作品、痴呆のせいもあるのですが、読んでいるうちにおじいさんだけ50年前の姿に見えてきます。
なのですが最後は一瞬で時間を飛び超え全く違う見え方がするんです。いろんなことが……魔法がかかったように……。
そうして見えてきた、それぞれの想いは読者の胸を打ち、とても暖かい気持ちにさせてくれます。
毎日一目惚れ。
愛する人をそんな風に思えたら、ボケていってしまっても、きっと凄く幸せなことだと思います。
是非一読くださいませ。