五十年間、毎日一回、一目惚れ

作者 水城たんぽぽ

102

37人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

この作品に出てくる痴呆のおじいさんは毎日おばあさんに「僕と結婚してください。一目惚れです」と言います。

それを言われたおばあさんは「ごめんなさい」と答えます。


痴呆で記憶の止まったおじいさん。
そんなおじいさんをそばで支えながら一人だけ新しい記憶を刻み続けてきたおばあさん。
時間軸のズレた二人。その中で抱くそれぞれの想いがどこか切なく悲しい。
だからこそおばあさんは「ごめんなさい」と答える……のだが。


この作品、痴呆のせいもあるのですが、読んでいるうちにおじいさんだけ50年前の姿に見えてきます。
なのですが最後は一瞬で時間を飛び超え全く違う見え方がするんです。いろんなことが……魔法がかかったように……。
そうして見えてきた、それぞれの想いは読者の胸を打ち、とても暖かい気持ちにさせてくれます。

毎日一目惚れ。
愛する人をそんな風に思えたら、ボケていってしまっても、きっと凄く幸せなことだと思います。
是非一読くださいませ。


★★ Very Good!!

 認知症や老々介護は、様々な意味できれい事ですまない。本作は、そんな陰鬱な事実を遠ざけてくれる。祖母の歯切れの良さが素晴らしいのはもちろんだが、祖父のたゆまぬ(?)情熱は症状を通り越して清々しくすらある。そして一番素晴らしいのは、祖父の言動を辛抱強く聞き取り、遂に真相へと導いた主人公だろう。たまにこういうご作品に触れると世の中まだ捨てたものではないと思える。

★★★ Excellent!!!

 登場するのは三人。痴呆の老人。介護老人。その孫。

 近頃の流行りもののような、特別強烈な個性を持ったキャラクターが存在するわけではありません。
 ファンタジー要素があるわけでもありません。
 劇的な伏線回収があるわけでもありません。
 ミステリでもサスペンスでもなく、なんなら悲劇でも喜劇でもありません。

 しかし、それでいて素晴らしい。
 しわがれ、渇き、まるで枯れ枝のようでありながら、とても暖かなお話でした。

 よろしければ、広く開け放たれた和室の中でご一読ください。