無題

清水優輝

第1話

胸の中心をステーキを食べるときのように右手にナイフ、左手にフォークを持ってゆっくりと裂く。ぐちゃりぐちゃりと開かれていく胸部。現れたのはベンタブラックの虚空であった。黒がちりちりと、燃えた炭の欠片のように宙を舞って飛来している。――重力を知って泣き喚いた赤ん坊を嘲笑うようであった。それらに翅が生えた。半透明に路線図が描かれていた。その図のどこにも我々は存在しない。

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無題 清水優輝 @shimizu_yuuki7

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