2,形成されていくもの

旅館は主に、祖父母が運営していた。

母が私を出産したのは21歳、現在ならまだ「子供」と呼ばれる事もある年齢だ。

祖父が、番頭。祖母が女将兼料理長。母は配膳や掃除など。

後に「出産直前まで仕事をした」と私が妊娠中に言われた。

他は、雇われ女中さんが何人かいた。


民宿にちょっと毛が生えた程度の旅館。

創業当時は「お風呂がある宿」自体が珍しかった。

この町で唯一、風呂のある宿だったと祖父は誇らしげに教えてくれた。

創業者は祖父の母、つまりは私の曾祖母にあたる。

祖父から聞いた当初は、まだ小学生もいってない頃、ただただ、そうなんだーと思った。

今では風呂のない宿は少数だろう。


父は、特産品を作る修行をしていた。

私が5歳になる頃、旅館の土産処を始め特産品を売るようになった。

母は、旅館の朝食を手伝い、その後土産処も手伝いと、私の相手はもっぱら祖父だった。


両親から勉強を見てもらったり、絵本を読処んでもらうなんてものを経験したことがなく、

それは、祖父の仕事だった。


「お前は家を継ぐ」

絵本を読んだり、歌を歌ったり、家系譜、家の歴史の勉強の合間にそう言われた。


それが関係したのかしてないのか。

小学生時代、私はスカートが大嫌いで、

そして、私を女の子だと当てる人は少なかった。

仲がいい友達は、男ばかり。

「男になりたい 」

男勝りの女の子だった。

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貴方の隣人は何をしてきたか 伊ヵ華(いかけ) @ikake

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