「幸せだねえ」~ちょっと待って!

小川貴央

第1話 そのお声掛け~ちょっと待って!


「幸せだねえ」のお声掛け~ちょっと待って!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


病院などで車いすのお年寄りを介護している

子供や夫婦などの付添者を見掛けると、思わず

お声掛けする人がいる。


「あなた、幸せねえ~」と。


車いすのお年寄りや介護する家族は黙っている。

”無言”が彼らの精一杯の答えなのだ。


「幸せだねえ」・・・は、身の回りの世話をみんな

やってもらえるからいいね、という由縁だろうけれど、

言われた方も逆に、


「あなたこそ、同じくらいの歳なのに自由に歩き廻れて

 幸せですね」って、


きっとそう言いたかったに違いない。


お声掛けの人に悪気が無いことも解ってる。

つい、難儀をしている人たちに寄り添い、声を掛けて

上げたくなる気持ちも大切だから。



でも”幸せ”って何だろう・・・?

”幸せ”って夢に憧れる理想の境地。


ならば、お声掛けの人は自分の老後の幸せな場面を

思い浮かべる時、車いすに乗った姿を描くだろうか?



”歩く”の字は”止”まることが”少”ない、の

二つの字が組み合わされている。

止まっただけでは、歩けないんだよね。


人は自分の足で行きたいところへ歩ける自由こそが

何よりの幸せなんだと思う。


もし、難儀をしている人たちにお声掛けをしてくれる

のなら、一つだけ言葉を替えたらいいかなあ~って。


「あなた幸せだねえ~」・・・ではなくて


「そばに居てもらえて”安心”ですね」・・・と。


その時、車いすの人はこう言うだろうね~


「ええ、私は幸せものです!」・・・と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

 「幸せだねえ」~ちょっと待って! 小川貴央 @nmikky

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る