『電子の双子』 テーマ:双子、恋愛

 有線で繋がれた私の脳はネットを介して双子の弟と繋がっている。

 共有された意識、思考。街を流れる空気や感情が私に押し寄せ、塗りつぶされてしまうと思えるほどにそれは強く、激しく。


 バックアップされた自己記憶を反芻しながら私は自分を認識し現実に結び付ける。

 弟の歩く世界の全てが見える。感じられる。触れるものも全てが私の中に、私のものとして記憶されるのだ。

 プールの外に見えるのは、私が私であった証明の遺品たち。

 シナプスとシナプス、電気信号と化学反応が反復して電子の海に溶けていく。どこから私で、どこからが弟なのか。

 弟の手が触れるその手は、私の手を掴んでいる。所詮は共有され、再現された反応に過ぎないのに。外への憧れと展望は強くなるばかりで決壊を待つばかりだ。

 その手を掴まないでほしい、その手を振り払って欲しい。その女と離れて欲しい。私の知らない感情を、私の知らない感覚をこれ以上寄こすのを止めて欲しい。

 チューブを伝わる薬物と脳内物質のカクテルが私の脳を犯すのだ。

 カプセル一杯になった私の思いはどうすれば良い?


 実験は第二段階へ。

 私は混濁する意識の統合を求めて、増幅された信号を弟に送り込んだ。

 困惑と恐怖が彼の手から彼女へと向けられ。香しい硝煙が私の鼻腔をくすぐるの。

 二重に聞こえるサイレンははたしてどっちの音だろう。

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15分で書いた短編集 雅 清(Meme11masa) @Meme11

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