パンツは被るものです。
西藤有染
パンツは被るものです。
人類は、パンツと共に進歩してきた。
羞恥心の芽生えによってパンツを履くようになり、科学の進歩によって快適性や機能性を求めるようになり、娯楽の進歩によって見た目やファッション性を求めるようになった。
元々は単に人体の最も重要な部分を隠し保護するだけだった布切れが、科学技術の発展と共に、より高性能なものへと変化していった。
そして、今から数年前、パンツ産業革命が起きた。きっかけはある有識者の言葉だった。
「人類にとって最も重要な部分を隠し保護する必要があるのであれば、頭部を保護していないのはおかしい」
世界中が衝撃を受けた。
何故、今まで私達は頭部を曝け出していたのだろうか。下半身の重要な部分は隠していたのに、頭部を隠していなかったのは何故なのか。
そこに気づいた途端、人類に頭部を人目に晒すことへの羞恥心が芽生えた。
何かで頭部を覆い隠さなくてはならない。そんな思いから、帽子やバンダナを被る人が急速に増えた。
しかし、あくまでそれらはファッションである。元々、見た目をよく見せる為に作られたものであり、重要な部分を隠す為に作られたものではない。
隠している筈なのに、隠しきれていないような、そんな不安が人々の間で蔓延していた。
そこに、画期的な発見をした研究者が現れた。
「重要な部分である頭部を保護し隠す為には、同様に人体の重要な部分を保護し隠す作られたものであるパンツを使えば良いのではないか」
人類史上最大のコペルニクス的転回、パラダイムシフトであった。
人類はパンツを被るようになり、研究者はより快適な頭部用のパンツを開発するようになった。
パンツは、AIやIoTといった目まぐるしい発展を続けている分野と結びつき、著しい進歩を遂げた。パンツがスマートスピーカーを搭載するようになり、バイタルサインを監視する機能を搭載するようになり、そして、政府が国民を管理するためのICチップを搭載するするようになった。
今や、パンツを被ることは国際法法で義務付けられ、被らない者は公序良俗に反する者として刑罰に処される事が定められている。それを知らない者はいない。
だから、君が逮捕された理由も分かるね?
パンツは被るものです。 西藤有染 @Argentina_saito
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