第2話・日記

10月10日。花音は自分の部屋に呆然と立っていた。

『10月8日。今日はいいことが二つもあった。一つ目は鈴と出かけた映画が予想以上に面白かったこと。二つ目はそこでイケメンの男子にあったこと。映画を見終わった後、カフェで友達と一緒にいるところだった。彼のはゲットできなかったけど、友達のメアドはもらったから、今度教えてもらおうっと!』

一昨日書いた日記。昨日は書いていないはずなのに、10月9日の日付が書かれていた。

それは真っ赤な字だった。

『10月9日。昨日の男の子がいた。その子は逃げてって言った。でも、間に合わなかった。すぐ下には地面があった。鈍い音がして意識が遠のいた。これは明日、ニュースになってるかもね。』

まさかと思った。

あの子、かつて親友だったあの子が書いたのかもしれないって。

でも、そんなわけない。あの子は、あの子は・・・死んだんだもの。

ううん、違う。花音が死なせた。


美咲と花音は小学校からの同級生で、親友だった。

美咲は明るくて元気いっぱいで、スポーツが得意だった。

花音の中では、最初は意見が合わなかったものの、自分が悪かったところをすぐに認める美咲の好感度は上がっていった。

中学も同じところを受験するほど、仲が良かった。

高校まで同じところを受けようと思っていた。

でも、邪魔が入った。

たまたま席が近くなった後から、美咲は花音よりも邪魔者を選ぶようになった。

さやかだ。

花音はイラついた。

なんで?私のほうが先に仲良くしてたじゃん。どうして私じゃダメなの?

そして昨日、花音は美咲を屋上に呼び出した。

最初はどうしてさやかとそんなに仲良くするのかを聞くだけのつもりだった。

でも、話していくうちに、理由も聞きたくないほどイヤになった。

もしかしたら、わかっていたのかもしれない。

花音は何をするにも美咲を誘っていた。

どこに行くのにも、当たり前のように美咲を連れて行った。

ソレがきっと嫌になったのだと。

そして、花音は突き飛ばした。

美咲は鈍い音を立てて地面にぶつかった。


日記から声が聞こえてきそうだった。

「ねえ、何で殺したの?」

手も伸びてきそうだった。

花音はイラついた。

そしてまた、学校に向かった。

学校には、案の定、さやかがいた。

さやかは手すりに片足をかけたままの状態で止まっていた。

花音はためらわずに突き飛ばした。

「じゃあね。」

そうだ。邪魔者は消えてしまえばいい。

このままだと、鈴も取られてしまいそうで怖かった。


10月11日。

朝起きると、机の上には日記帳が開いておいてあった。

『10月10日。屋上から落ちたはずの美咲がいた。美咲も逃げてって言った。でも、間に合わなかった。「じゃあね。」って聞こえた。美咲、ありがとう。私も明日、ニュースになっているかもね。』

それは赤い字で書かれていた。

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止まらぬ日記 月乃天使 @tukitensi

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