雨の代わりにどんぶりが降る世界なら

坂無さかな

第1話

-例えば明日から、雨の代わりにどんぶりが降って来たならば-


もし神様の気が狂って明日から雨の代わりにどんぶりが降ってくることになれば、僕はきっとどんぶりが嫌いになるだろう。

そしてどんぶりの代わりに雨を好きになる。

どんぶりの日はみんな手にどんぶり防ぎを持ち歩き、少し空気がホカホカしてる。

ある大どんぶりの日に田舎のバス停でどんぶり宿りをしていると、どんぶり塗れの女子高生が息を切らせて駆け込んで来る。単調などんぶりの音だけが響く屋根の下、お互いに気まずくなりどちらからともなく言葉をかける。話が弾み食事に誘い、少し洒落た定食屋さんで一緒に二人の大好物の雨を啜る……なんてこともあるかもしれない。

なんだ、意外と悪くないかもね。明日からどんぶりが降ってくればいいのに。

この世界の神様は真面目で退屈だ。窓辺の止まり木に止まっている揚げ出し豆腐にそう語りかける。

揚げ出し豆腐は小首を傾げながらもキューッと鳴き、嬉しそうにひたひたと油を垂らして喜んだ。かわいいやつめ。

あーあ、変な妄想をしていたせいで小腹が空いたな、今日のお昼はインコを食べよう。

少し空が笑った気がした。

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雨の代わりにどんぶりが降る世界なら 坂無さかな @Oreno_Gondola

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