現代医療の知識と経験と技術「だけ」しか持たない主人公が、魔法医療の世界で隙間産業的な医師として生きてゆく。
圧倒的な即効性と効力を持つ魔法と、環境がなければ出来ることの限られる医師。
魔法で人を癒す医術師達も現状に満足することなく、治療技術の発展を目指している者はいるのだけれど、その方法として「主人公の側で医療技術を学び取り込む」考え方と、「敢えて離れなれけば魔法独自の発展は見込めない」考え方があるのが面白い。
知識量以外のアドバンテージが無い主人公も、過渡期の存在として在るだけでなく、現地の医療発展に貢献しようとしていたり──在る物、与えられた物を使うだけでなく、地道に発展させることを考える登場人物達に好感が持てる話。
下知識のいらない、シンプルな導入からはじまり、徐々に深まっていく物語に引き込まれていく。魔法と現代知識の対立はこの手の物語の大きなテーマだけど、どちらも貶すことなく、うまく撚り合わせていくのはとても大人なストーリーテリングだと思う。あるいはもしかしたら、魔法のように高度な技術となってしまった現代医療と町医者の哲学、との折り合いの付け方がここにはあるのかもしれない。
世界観についても、RPGのように現実性を単純化させていながらも、どんな世界でも根底に通ずる人間社会の性を当てはめているようで、ファンタジーに興味をもたれない方でもこのドラマを楽しめると思います。逆に、そういったファンタジーに慣れ親しんだ方は、妙にままならないところのあるこの世界観がくすぐったく、興味をそそられるのではないでしょうか。