最後に

後書き

 というわけで無事、魔法使いの師匠は友だちを作りたい、これにて完結となります! 今回はプロット一切なしのぶっつけ本番で書いていたので本当に大変で大変で……。そのせいで2回ほど連載をストップさせてしまうことになってしまったのは最大の反省点です。


 さて、この物語を書こうと思ったきっかけは、初めてカクヨムコンに参加した時でした。別の自作でブックダイバーという長編があるのですが、宣伝してしまくって精根尽き果てて、もう宣伝はいいからさあ次は何をやろうかという感じになりまして、自分の作品をこんなに宣伝したのは初めてだったので久しぶりに創作魂に火が灯ったんですね。その時にふと思い浮かんだのはこの作品でした。と言っても物語の書き出しだけがフワッと降りてきて後はなにもない。でも、何だか書けたら面白そうだと感じて次の日にはプロットも何も用意せずに書き始めてました。第2章の覇竜祭編まではものすごくスラスラと書けたのをよく覚えてます。その後に物語やキャラが動かない地獄が待っているとも知らずに……。


 この作品の一つの決め事として、悲しいだけの物語は書かないように心がけました。悲しい物語って心はすごく動くんですけど、同時に読んでる方はすごくしんどいんですよね。少なくとも自分は。この物語の世界観はところどころ残酷な現実を表現している箇所もあります。でもそれはあくまでエッセンス程度。最終的には読んでいる人の心を温めたり突き動かしたり、そんな物語を書きたかったのです。


 そんなわけで、なにはともあれ無事連載終了まで漕ぎ着けられたわけですが、実はこの作品は完結させるつもりはありませんでした。とある業界で言うサンドボックス、つまり自分の砂遊び場にしようと考えていたのです。考えついた話を気ままに不定期に書き、何も思いつかなくなったら漫画でよくあるようなちょっと重要そうな話を持ってきて、その後も二人の旅はこともなげに行われていくという、俗に言う俺たたエンドにするつもりでした。しかし、ここでとある人のこんな言葉が突き刺さりました。


「ちゃんと終わらせた話が読みたい」


 これはきっとエタってしまった話のことを言われていたのでしょう。しかし、自分はこれを見過ごすことはできませんでした。これを読んでくれている人は、俺たたエンドは求められていないんじゃないかと。その時から自分はこの作品をちゃんと終わらせてあげようと考えるようになりました。そこで4章あたりから伏線を張りだして、今回のエピローグとなったわけです。


 とは言っても全く着地点など決めていなかった物語ですので、どうするかそれはもう悩みましたw いくつか案はあったのですが、最終的にはあのような形になりました。これに関しては思い残すことはないかなと。あるべき形に収まったのではと思います。


 あとタイトル。流行りっぽい説明のような感じですが、これは意識して決めたわけではありませんでした。話を思いついた時にふっと降りてきたタイトルがこれだったのです。基本的に小説のタイトルを付ける時にはその物語を象徴する固有名詞を付けることが多いのですが、この物語のタイトルはこれ以外しっくりくるものはなかったでしょう。そのぐらいお気に入りです。強いて難を言えば長いのにどうやって略せばいいか分からない、という点でしょうかw 実際これ地味に困るんですよね……。


 さて、せっかくなので各章ごとに思い出でも振り返ってみましょうか。


プロローグ

 生きるのに疲れた僕が師匠に拾われたお話。思いつきで書いているため全然キャラとかその後の話とか考えていなかったのですが、最終的に僕と師匠のキャラはこの時と最後でブレたりはしなかったかな。いや、師匠は最初はミステリアスかつちょっと不気味にしようと思ってたんですが、書けば書くほど人間味が増していったので、ある意味むちゃくちゃブレたキャラかもしれませんw


1章:グラガラス野盗団編

 この物語はオーソドックス、もっと言えば今流行のタイプではなく、一昔前の懐かしみを感じるファンタジーにしようかなと考えていました。この1章はそれを読み手さんに印象づけるための最たるもので、他の章と比べてインパクトは薄いもののこの物語がどんな感じに綴られていくのかが表現できた章ではないかと。あと個人的に魔法詠唱の筆が一番乗っていたのもこの時で、炎帝の魔法や不死鳥の魔法の詠唱はお気に入りです。


2章:覇竜祭編

 異世界だしドラゴンは外せないだろうと書いたお話。個人的に一番のお気に入りの章です。特にグルタの使い勝手がよく、ついつい別の章にも出してしまうほどでしたw 僕とグルタのタッグマッチ、苛烈な生存競争からの僕の策での逆転勝利は気持ちよく描けたのではないかと思います。師匠を抜いて僕の一番の友だちは誰か、と言われたらやはりグルタではないでしょうか。


3章:空の世界編

 この章はほんっっっっっとに苦労しました! 自分の他作品とのクロスオーバー、世界観や敵のスケールの大きさ、登場人物の多さなどなど。要素をこれでもかと詰め込んだ結果の自爆です。特にクロスオーバーの方は向こうを読んでいない方でも楽しんでもらえるように書いたつもりですが、やはり一部の描写は向こうの作品ありきのものもあり、そこは反省が必要かなと。でも星喰みとの決戦はなんとかそのスケールの大きさを表現できたのではないかなと思います。


幕間の物語

 僕と師匠。それぞれを深堀りするために書いた物語。師匠の方は友だちを作った後はどうしているのか。僕の方はプロローグから1章の間になぜ師匠を師匠と呼ぶことになったのか。これも当初は全く考えていなかったので完全に後付ですが、2つとも良い話になったかなと。


4章:悪魔編

 ここから物語の終わりを意識し始めました。家族というものを知らない僕が、カレット先生のリーリアに対する母親の愛情を目にすることによって、自分にいたはずの両親は本当はどうだったのか、という疑問を呈する章です。結果、カレット先生にはとても重い過去を持たせたり大変な思いをさせることになりました。カレット先生、ごめんなさい……。重たい話でしたが、それでも必要以上に重くしないように気をつけていたのを覚えてます。


5章:魔法少女編

 別名、師匠大暴走編w これは物語の終わりに向けてとか一切関係なく、自分が書きたいから書いたお話ですw ギャグ物が書きたかった、そして魔法少女の姿にされて恥ずかしがる僕が書きたかったんです! これだけははっきり言っておきたかった。

 この話は色々と別案があって、例えば各地のご当地魔法少女と対決する僕と師匠、そこに現れる悪の秘密結社の巨大ロボ。ラストは対決した魔法少女が集結してロボを倒して終了なんてのもありました。結果的にギャグ半分シリアス半分みたいな感じになっちゃいましたが、個人的には概ね満足です。


6章:オーウェン編

 師匠にも師匠がいたらどんな人だったんだろう、ということで考えたこの章。オーウェンは普段の師匠にも負けないようなスケールの大きさを意識して設定を考えました。

 あとは師匠の過去にもちょっと触れたお話でしたね。師匠の過去の話は頭の中にあるのですが、暗くて重くてスッキリしない話になってしまうので書くつもりは今のところないです。一つ裏話を残しておくと、実は師匠の出生にはオーウェンが深く関わっているのです。


7章:ラグライアス編

 実質最終章です。この章の大まかな構成は幕間の物語を書き始めた頃から頭の中を走っていたので書くのに苦労することはないと高をくくっていたのですが、書き始めてみるとこれが実は難しかった。どうやって僕達とエヴァンズ家を結びつけるかとか、ラストの僕と師匠の問答とか、書いては書き直してを繰り返したのを覚えてます。師匠が初めて自分の感情を僕に吐露したシーンが個人的にお気に入りです。


エピローグ

 最終章から10年後のお話。師匠は新しい友だちを作る気になれず生きた屍になり、一方の僕は無事にエヴァンズ家を継いで、自身にかけられた魔法を解こうと日々研究しているという。

 最終的には記憶を取り戻した僕が師匠と再会する形になったのですが、実は最初はそうはなってませんでした。最初は僕が記憶を取り戻した段階で話は終わり、後は読者の想像に任せようとしていたのです。しかし、それでは読者の本当に読みたかったものが読めていないんじゃないかという自分の中の葛藤があり、最終的にあの形となりました。あれが結果的に良かったのか、不要な後付だったのかは分かりません。それでも、一度出した以上はあれがこの物語の結末なのです。あの後師匠達はどこに行って誰と過ごし、誰と新しく友だちになったのか。思いを馳せてみるのも一興かと。


 さて、話したいことも全部話しましたし、いやキャラも語り尽くしたいところですが文字数的にそろそろこの辺りでw もしかしたらいつかふらっと外伝などを出すかもしれませんがこの物語はこれにて一度終幕となります。

 最後に一言。こんなに長いお話をここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。この物語を読んで何かを感じてもらえたなら、それが自分の何よりの幸せです。

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魔法使いの師匠は友だちを作りたい 夢空 @mukuu

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