信じてほしい

怯えながら辺りを見回しているとレンが頭を搔きむしりながら

「別にとって食おうってわけじゃねーよ、落ち着け」

さっきまで解剖しようとしていた男がしていい発言ではない。

「ここどこなんだよ、俺は家に帰りたいんだ」

「そう簡単に帰すか」

「まぁ何もわからずにここ来たんだ、おびえるのもしょうがない。

しかしこのまま帰すこともできてないんだ」

「どうしてだよ、俺なにもしてないし、あの薬だって飲まな」

ここまでいって俺は馬自分の命が危険な状態であることを思い出した。けれど今のところ身体のどこにも異変はないし、締め付けられるような痛みも息ぐしさもない。もしかして病が進行して感覚は…

レンは深いため息を一つつき

「やっと思い出したか、アホが」

「そうだよ、俺なんで生きてんだよ」

「その説明は俺たちには難しい、専門医がいるからその人にに説明してもらおう」


そう言って一つしかない扉を開け、リーダーはこちらを向き直り一言


「信じてついて来てほしい」


表情はさっきと変わらず笑顔だが、瞳の奥の切ない感情が映っていた。この人は嘘をつかない。確信はない、また騙されるかもしれない。けれど心の中の優しく笑うおばちゃんがそう言っているような気がした。俺も信じたい、そう思ってリーダーたちの後ろについていくことにした。

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孤高の奇人とフラ・デ・シング 小河 @ua0-100

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