フランス人形

「あんなんでタオれる、あなたがワルい」

「そうよそうよ、これじゃまるでわたし達が馬鹿ヂカラみたい」

言いながら四本の人差し指でドスドスと俺の体を突いてくる。このままだと貫通しかねないと思い

「悪かったから、俺が弱くてすみません。」となんとも情けない謝罪をすると

「「わかったならよし」」と満足げな表情で互いに手を取りその場で幼稚園児のお遊戯のように回り始める。

俺は昔こんな双子をどっかのホラー映画で見た気がする。手を繋いで薄暗い廊下の奥に立たれたら…考えただけでゾッとする。彼女達は回りながら歌いはじめた。

「わたしの名前は一織」「わたしのナマエは千織」

「「二人はずっと一緒、一人欠けたら二人じゃない。

一人増えても二人じゃない。二人はずっと一緒」」

ふふ、あははと感情のない笑い、短調なリズムで繰り返される歌。ここはもしかしてホラー映画の中の世界かもしれない。事実さっきから震えが止まらないという現象が俺の身に起こっている。

「こらこら、二人ともやめなさい。はじめましての人を怖がらせるんじゃない。すまんな、いつもあんな感じなんだ、慣れれば大抵の人は平気になるから」

リーダがいう横で口元以外笑ってない微笑みをしたまま仲良く手を繋いで部屋を出て行ってしまった。あの怪現象に慣れる日が来たらそれはそれで恐ろしいのでは。

そして俺にはもう一つ恐ろしいと思っていることがある。それはこの場所がどこなのか全く把握できないこと。今彼女たちが出てったあのドア以外何一つとして出入り口がないし、外の状況がわかるような窓もない。真っ黒な天井の端にあるくぼみの遥か上に小さな天窓が一つあるだけだった。



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