自己紹介
どうやら俺の周りをぐるりと囲んで話してたらしく、起き上がると四方八方に顔があった。
皆一斉に一歩下がり、気まずい空気が流れる。「あ、あの」と言い淀んだとき
「ちぇ、なんだ生きてんのかよ」と
さっきいち早く俺を解剖したがってた声の主がつまらなそうに言った。
「なんだよ、その言い方は、お前初対面の人間に向かってそれはあまりにも」
「まぁ怒らないでやってくれないか、
こいつも悪気があるわけじゃないんだよ」
と仲裁に入った青年の声はあの戦いで素早く指示を出していたリーダーの声だった。
「急にこんなことになって驚いたよな、
とりあえず自己紹介だ」
そう言って彼は自分の仲間の紹介をしてくれた。
さっき俺に向かって心無い言葉を向けてきた青年はレイという名前らしい。
年は俺と同じくらいで、青みがかったふわふわのくせ毛と同じ色した瞳、顔の大半が髪の毛で隠れてしまっているがそこから覗く目鼻立ちが整ってる印象だ。
ちょっとキレイにしたらモテそうだなと思いながら睨みつけていると、
「んだよ、見てんじゃねーよこの泣き虫ヒッキーめ」
前言撤回だ、こいつはモテない。
モテないであってくれ。
次に紹介されたのは先ほどの会話でひときわ大人な雰囲気を発していた声の持ち主の女性であった。
夜色のなめらかな髪が肩の高さで品よく揺れ、今流行りのK-POPスターを思わせるような顔立ち、また北欧の可愛らしい少女を思わせる目元。
どこかあどけなく親しみやすいような、
けれど色っぽい不思議な子だった。
彼女を指差しながらリーダーが
「んでこれが」と言うと
「人をモノみたいに言わないで、自己紹介くらい自分でやれるわ」
そう言って俺の片手を取り、
ギュっと握りしめながら顔を近づけ
「はじめまして、
よろしくねお兄さん」
と微笑んでいる。
濃厚な甘酸っぱい 香りがして頭の中がほやほやする。
それを見たレンはチッと
舌を鳴らして彼女を勢いよく俺から引き剥がし
「おい。カヤ〝あれ〟が出てるぞ」
「ごめんなさい。完全に無意識、初対面の人にはついやっちゃうのよね」
「誰彼構わず翻弄して落とすなよ、そんなことしてたらいつか痛い目見るからきーつけろ」
「なかなか失礼な言い方ね」
二人の間にピリついた空気が流れ、
とっさにリーダーが「まぁまぁそれくらいにしろよ」となだめている。
こいつも苦労が絶えないなぁ、と思いなが奥に目を向けるとそこには二人の女の子が立っていた。
なんとかなだめ終わったリーダがこちらに向き直り
「そしてこの二人は」
「あぁ、さっき俺に思いっきり腹パ」
言いかけたとこでやめてよかった。
気がつけば目と鼻の先には瓜二つの顔をしたフランス人形が目玉をかっ開いて俺を威圧していた。
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