ドラゴンさんのぶらり旅

ぽたたま

第1話 生誕

暗くて深い闇の中を浮上していく、まどろみのなか自分は目を開いた。そこは水晶の楽園と言ってもいいような現実離れした光景だ。きらめく水晶はまるで森のように広がっている。自分は人間として死んだ、記憶はほとんどないがそれはわかる。


つまりここは死後の世界か・・・


とりあえず身体を動かそうとすると、自分の周りに『パキッ』と亀裂が一斉に入り世界が割れた。


うおっ!なんだ!


身体が落下し地面に落ちる。水晶が散らばる中後ろを振り返ると巨大な水晶が割れていた。水晶から俺は出てきたのか?これが死後の世界か?それにしても身体に違和感がある。両手を見てみるとそこには灰色に輝く鱗がまるで鎧のように光沢を放ち、鋭い三本の鉤爪と手から腕に向かって飛膜があった。


一体なんだこれは・・・


身体を見てみてもまるで鎧のように鱗があり、後ろには青く光る尻尾が見えた。まるでドラゴンのような身体だ。おそらくこれは転生というものなのだろう。わずかに残った人間の記憶がそう教えてくれた。


死後の世界ではないのか、この世界は。つまり二度目の生を授かったということだ。


ゆっくりと心を落ち着かせ世界を受け入れる。人間としての自分は死を迎えドラゴンとして生きてゆく。身動きを取らなくなってからどれほど時間がたっただろうか。


よし。心も落ち着いた。


腹が減った、水晶を見ていると美味そうに感じる。そういう種族のドラゴンなのだろうか?


「グルルルルゥ」


唸りながら、砕けた水晶を口に運ぶ。『バギャッゴリッ』と音を鳴らしながら咀嚼する。


美味いぞこれ!


それから夢中になって水晶を食べ続ける、水晶の食べ放題だ。


「グルゴアアアッ!」


嬉しくてついつい咆哮してしまう。ドラゴン特有の味覚なのかマイルドでコクのある味わいなのだ。必死に食べてしまう。しばらくして周囲の砕けた水晶が大体なくなりお腹もひとまず一杯になった。


とりあえず寝てから今後について考えよう。食べた後の眠気が激しい。


そうと決まればさっそく寝る場所を探さなくては。周囲を見渡していると自分の生まれた水晶がちょうどよく台座のようになっている。もっと綺麗にするために拳で尖った水晶を粉砕する。


バギャ・・・パキッ・・・


細かく砕いてなるべく水平にしていく。ある程度丸みが残ったり尖っている部分もあるが、まあ良いだろう。


台座の上に乗り身体を丸める、まだ尻尾などの動かし方がぎこちないがすぐ慣れるだろう。瞼を閉じようとしてみても瞼が動く様子がない。


あれ?


手で触ってみると目の部分はどうやら鉱石のようになっているようだ、しばらく目を閉じようと悪戦苦闘しているとコツをつかんできた。どうやらライトの電源を切るように徐々に目の電源も消していくようだ。目に手を当てると青い光が反射して輝いている。おそらくライトのように光っているのだろう。


そうしてゆっくり目を閉じていき、そのまま眠りの世界に入っていった。



*****



惑星ズィータにひとつの竜が生まれた。大いなる竜は世界を乱す。かの竜は唯一にして至宝。



アーティファクト 世界の記録者


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