第43話 ―Continue to the next volume―
階段を登る足音が響く…。
石で作られた階段をゆっくり、そして、しなやかに登る、細い脚に真っ赤で高いヒールをもつ靴。
階段を登り終えると、女は、壁際にある人影に目を細め、「あらぁ?来ていたのぉ?」と妖艶に言葉をかけた…。
『デルヘルム』より北東に位置する黒鉄山系中腹にある砦…。
石で組み上がっているこの砦は、3階建てである。
1階は、大きなエントランスとなっており、2階は、広間となっていた。
3階はと言うと…何もない空間。
2階の広間には、真っ赤なひじ掛けの椅子が1つに、丸く小さなテーブル。
そのテーブルには、紫の花びらをもつバラが1輪飾られてある。
広間の奥には、大きな天蓋付のベッドがあり、その天蓋からは、淡いピンク色の中が見える程薄いカーテンが覆っていた。
広間から小さな扉を抜けるとダイニングルームがあるらしい。
壁に掲げられている篝火が、怪しく、そして、うっすらと部屋を浮き立たせていた。
窓辺にあるロッキングチェアー、その傍には、蓄音機があり、やさしい音色を発している。
「いえね…あなたを見かけましてね…」と薄暗い壁際に立つ一つの人影が答えた。
「そう…」と女は、広間に進むと窓際にあるロッキングチェアーへと、迷いなく足を勧めた。と…、チェアーの傍に来ると、その人影がやんわりと動き、女の背中に現れると、女を後ろから抱き、そして、イヤらしく首筋に鼻を持って来る。
「…そう言うのはぁ…、イヤだわぁ…」と女。
「そうかな?でも…ここは…」とその影が、おんなの股間に手を持って来ると、スカートの上から股の割れ目をなぞった…。
「…そうね…、でもぉ…」と男に体を預けると、目の端で男の表情を探る。
「…あなたの…モノには、ならないわぁ」と女。
その言葉に、影は、股間から手を離し、女の胸に持って来ると、服の襟元から手を入れて、胸を鷲摑みにする。
「この体が…ほしい…」と影。
「そう?でもぉ…あなたの目的は…エルフの女じゃ?」と女がうっとりとした目で、影の表情を探る。
「…彼女は、わ~たしの妻。あなたは……愛人…ってところかな」と影。
「まぁ~」と女は、乳首を転がしていた腕を、襟首から外して体を男から離した。
「…そう言うのね…、まぁ…、私には、大事な人の子供がいるし…」と言うと、影を見て…。
「大事な子もいるから…」と言葉にする。
「…大事な子?」と影。
「…えぇ~、坊やは…ウフっ」と妖艶に…何かを思い出したような笑みを見せる。
その表情を見た影は、「…あそこにいた…坊主…」と言葉にした。
「あらぁ?いたの?」と女。
「あぁ。いいモノを見させてもらいましたよ…それにしても、どうして、あなたは人間族に?」と聞く。
「…さぁ~、…でもぉ」と言いながらロッキングチェアーに腰を降ろし、揺らし始めた。
「…いいでしょう…少し挨拶をしてきていいかな?」と影。
「…そうね…、でも殺さないでよ…、もし…」と女。
「…まぁ、気を付けますよ」と言い窓辺に向かう。
「…ほんとに気を付けて、坊やが持っている武器は…危険よ」と笑みを見せる。
「そうですか…なら、その武器を持ってきましょう」と影。
「あらぁ。そうしてくれるの?…じゃぁ、その時は…」と目を細めて見せた。
「あぁ…楽しませてもらいますよ」と影が窓辺に立ち、その体を外に投げ出すと…。
消えた影を見た女は…。
「…坊やを、甘く見たら…ふふふ…気をつけなさい…、ゲスな吸血鬼さん」
と言葉にして、ロッキングチェアーを揺らし、大きくなっているお腹を、軽く弾きながらリズムをとり始めた…。
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遥かなるアブスゲルグⅤ 死に至る病と錬金術師
遥かなるアブスゲルグ Ⅳ -最凶の召喚士と紅きドラゴン- さすらいの物書き師 @takeman1207
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