第2話
敷き詰めた大きな葉っぱの冷たさを肌に感じる。少し目を開けると太陽の暖かい光が目に差し込んでくる。
「ん...寝た気しないな...」
覚醒したと同時に今の自分の状況を再認識させられた。毎朝飲んでいたコーヒーがある訳でもなく、炊飯器で炊いた白米やきつね色に焼いたトーストがある訳でもない。
ここは異世界、経緯は省くがひょんなことから飛ばされてしまった。
これが現実なのか、それとも夢なのか。そんな事が分かる訳もなく、今はただこの状況を飲み込むのが精一杯だった。
流石のシュリアもこの状況には不安になった、泣きそうになったが涙を堪える。今はこの世界で生き残るしかない、ここで死ぬ訳にはいかない。改めてそう決意しようとした、その時。
「感情、『悲しみ』を確認。大丈夫ですか?マスター。」
「ゔぁぁぁああぁぁぁっ!?!?」
どこからともなく聞こえてくる機械のような音声に驚き、思わず身構える。周りを見渡すが誰もいない。昨日の夜見た景色のままだ。
「誰!?どこにいるの!出てきなさい!」
慣れ親しんだ中国拳法の構えのまま今出せる精一杯の低い声で叫んだ。
「私に実態はありません。あなたの抑圧された感情が外に出ていたので声を掛けました。」
理解が追いつかない。変なゲートが開いて飛ばされるわよく分からない機械音声が流れるわで、上司のパソコンじゃないが頭が爆発しそうだった。
「マスター!落ち着いてください。怪しいものじゃありません。」
「どこからどう聞いたって怪しいじゃないの!一体なんなのよ!」
何もいないはずの空に向かって叫ぶが、返ってくるのはやまびこだけだ。
「自己紹介が遅れました。私、マルチシステムAIの『FieldsFood(フィールドズフード)』と申します。簡潔に説明すればタ○コマやド○えもんの様な物ですね!『フード』とお呼びください!」
意気揚々と自身の説明をするAIだが、やはりシュリアは理解が追いつかない。
こんな事ならパソコンをもっと嗜んでおくべきだったと心から思う。簡単な操作などは人並みに出来たが、この類のシステムやらなんやらの知識は全く無い。
「えーと...と、とりあえず休ませて...。」
その場にヘタリと座り込んでしまう。
「要するに1人じゃないって事ね、良かった...。」
しかし妙だ、昨日の時点ではこんなもの、もといフードはいなかったはずだ。
いつだ、いつこんな得体の知れないものを拾ってきたんだろう。こんなに悩んだのは「違いのわからない水出しコーヒー選手権」とかいう馬鹿げた社内イベントで、缶コーヒーを提出された時以来だ。
「マスター、拾って頂き感謝します。ド○えもんのような活躍は出来ませんが、マスターのお役に立てるように頑張りたいと思います。」
よくそんな呑気な事が言えるなこの野郎と思ったが、思い当たる節があった。
「銃を拾った時ね...。」
ぴんぽんぴんぽーん!という効果音が流れる。なんだこのAI、タ○コマやド○えもんの例えと言いバライティ性に優れすぎだろ。
心の中でツッミを入れたが、まだ全ての謎が解けたわけではない。
「ね、ねぇアナタ!なんで銃の中にいたの?しかも拾った時にはならウンともスンとも言わなかったじゃない。」
「よくぞ聞いてくださいました!流石我がマスター!鋭いですね!」
感情の緩急や起伏がある、AIの癖にやけに人間臭い喋り方をする。
「私はアナタが拾った銃の中いた、説明型のAIです。役目としてはターゲットとの距離の報告や位置情報を取得する、と言ったものです。軍事目的で作られているAIなので学習能力にも長けています。」
ここまで来るとよく分からなくなってくる。簡単に言えばド○えもんみたいなものか、コイツの例えが役に立った。と勝手に納得した。
「使用者が居なくなり、長い間放置されていたようですが、そこでマスターに拾って頂いたという訳です!」
「でもターゲットとの距離や位置を知らせるのよね。今銃を持ってる訳でもないし、どうして喋れるのよ。」
「簡潔に言えばマスターの思考と同期したからです。学習もできますし、軍のプロテクトも掛かっていないのでマスターが着ているスーツに潜らせて頂きました!」
意気揚々と話しているが、やはり現実世界より技術が進歩している。AIと言ったら現実世界では返事をするくらいの物だったが、人間のように学習するAIなんてものは存在していない。
しかし今は心強い味方だ。孤独じゃないだけで随分と気が楽になる。
「なんだかよく分からないけど、アナタの事は大体分かったわ。」
だがまだまだ疑問はある、一つずつ解決しなくては。先は長いが、現実世界に戻れるかもしれない、そんな希望がジュリアの行動力になる。
「聞きたいことが山ほどあるわ、答えられる?」
「もちろんですよマスター!何なりとお聞きください!」
ようやく一歩だ、これで歩き出せる。淡い期待と共に人間臭いAIに質問を始めた。
・・・
目が覚めた。
覚醒し、目に入ってきたのは真っ白な天井。視線を横に逸らすと点滴パックがある。
点滴パック出ているからチューブをなぞっていくと自分の腕に繋がっている。
病院か?ここはどこだ?俺のパソコンを覗いていたあの女はどうした。
「目が覚めたか?」
声をかけたのは自分のパソコンを覗いていた女ではない。軍服のようなものを着た、不敵な笑みを浮かべる男だった。
「君の話を聞かせてくれないか。」
鋭い目が、ニヤリと笑う。
To be continued...
上司のエロスが爆発したOL異世界サバイバル ミウラ @Miuracv
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