上司のエロスが爆発したOL異世界サバイバル

ミウラ

第1話

「キィエエェェエエェェエェェ!!!」

目に入ってくる光で覚醒する。しかし私が上げた声は20代女子の可愛らしい声ではなく、まるで霊媒師が除霊の時に叫ぶような、この世の物とは思えない奇声だった。


「ふぅ...。」

朝特有の憂鬱感をリセットすべく、冷たい水溜りから水をすくって顔を洗った。


「もう2日か...慣れるにはまだ時間が掛かりそうね...。」

ここは異世界。

この世界についてまだまだ分かっていないことの方が多く、ここがどのような場所なのか説明は出来ないが、私が会社に勤めていた世界じゃないのは確かだ。


2日前のこと。毎日飽きもせずセクハラをしてくる上司に嫌気が指した私は、奴の弱味を握るべく、奴が外回りをしている隙に彼の部屋のパソコンを開き、秘蔵ファイルを見つけたところで犯行現場を上司に発見された。

絶体絶命、逆に弱味を握られてしまったのは私の方かと思ったが、コピーしようとしたデータ容量が多かった為か、(色んな意味で)耐えきれなくなったパソコンが小刻みに震え出し爆発した。


その爆発で発生した超エネルギーが亜空間へ繋がるワームホールを生み出し、私だけでなく、上司やその部下も吸い込んでしまった。


眩い光が薄れていく。

目を開けると、そこには普通に生活していては目にすることのない景色があった。

遥か遠くまで生い茂る美しい緑の木々、まるで削り出されたばかりの木彫りの様に荒々しい岩。その岩には人間によって手が加えられていない事を物語る長く伸びたツタ。オフィスの窓から見える街の景色とは似ても似つかない光景が広がっていた。

「ここ...どこ...?」

セクハラ上司のパソコンが爆発し、ブラックホールの様な物に吸い込まれた所までは鮮明に覚えているが、その後どうなったかが全く分からない。

一緒に吸い込まれていった上司とその部下の姿はどこにも無い。どこか別の所へ飛ばされてしまったのか、それとも...。

下を向き、その場をグルグル回りながら考え事をしていると、ふと自分の服装に目が行った。

「何よこの服...。」

朝に着たはずのいつものスーツでは無く、まるでゲームの主人公の様な近未来的な服装になっている。

よく見ると学生時代にいつも着ていたセーラー服を映画などでよく見るパワードスーツにしたようなデザインだった。

「20はたち過ぎてセーラーはちょっと痛いわね...。」

ツッコミ所が違うとは思ったが、セクハラ上司の発言を無視しながら見ていた景色とはあまりにもかけ離れていて、理解が追いついていない。とりあえずここから動いて少しでもこの世界を調べなくてはならない。心無しか風も強くなっている、この格好では少々肌寒い。


周りをキョロキョロ見渡しながら少し歩いた。目が覚めた場所から少し離れた所に消えかけている焚き火がある。人がいるかも、と淡い期待を持ち駆け寄ったが誰かが使用していたような痕跡は無い。

「すみませーん!誰かいますかー!?」

少し大きめな声で叫んだが、返ってくるのはやまびこだけだった。

「(人がいないなら仕方ないわ、暗くなってきたし今日はここで夜を明かさないと。)」

シュリアは消えかけている焚き火の炎を一晩使える物にすべく、薪を取りに行った。祖父の影響で様々な拳法の修行を森でしていた為、焚き火やサバイバルには少し自信がある。

「おじいちゃんに感謝しなくちゃね、お陰で男の人に負けた事もモテた試しも無いけど。」


幸い近くには木々が大量に生い茂っているので、燃やすものには困らない。しばらく薪を拾い集め、一晩分の薪を手に入れた所で薪をくべた。

勢いよく燃える様子を見て少し安心した。焚き火の炎は、少し風通しが良い空間をじんわり温めてくれる。


しばらく焚き火で暖を取っていると、奥の岩場に一瞬だけ光る物を見つけた。ほんのわずかに光ったので気のせいかと思ったが、何か違う。金属ような物が反射して光った感覚だ。焚き火の炎を強くしなければ見えなかったかもしれない。

何があるか分からない、周りに注意しながら岩場まで進むと、そこにはこの壮大な自然には似合わない物騒な物が隠すようにして置かれていた。

「銃と弾丸...かしら、それに刀とバックパックまで。」

鈍い金属の様な光の正体は、アサルトライフルとハンドガン、刀。そしてそれらを仕舞うためのバックパックとケースがある。

扱ったことのない銃器の類いからは、ズシっとした重さと冷たさが感じられる。これで簡単に命が奪えると思うと、少しゾッとした。

どうして置いてあったかは分からないが、幼い頃から祖父に教わっていた拳法だけでは不安があったので、一応持っておくことにした。

「銃に刀...どうしてこんな物が...。この先、何があるのかしら...。」


強い風が吹く。不安を煽るかのように吹いたその風は、焚き火の炎を消してしまいそうなほど強く、そして冷たかった。

この世界に来る前から気を張っていたからか、唐突な眠気がシュリアを襲った。

すぐ側に生えていた大きな葉っぱを敷き詰め横になると、すぐに意識が薄れていった。


・・・


『起動シークエンス開始...。システム異常なし。FIELDS FOOD起動。』


・・・


To be continued...

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る