第2話 本当に相談者?

「媛河さん」

容姿が完璧すぎるその男子は、同じクラスではないけれど、名前くらいは誰もが知っていた。

柴楽海廉しぐらみれん。頭もよく、運動神経もいい、まさに理想の男子。

おまけになぜか料理までできるという一家に一台いたら便利そうなやつだ。

告白は毎日、途絶えない。もちろんされる側。

付き合っている人の一人や二人(二人いたらまずいか)いるだろうに、どうして相談に来たんだろう。

「柴楽海君、どうしたの?」

「どうも何も、媛河さんに相談に来たんだけど。」

ふぅ~ん。彼女と別れでもしたのかな?

私がそんなことを考えていると、まるで心が読めたかのように柴楽海君が言った。

「俺、今まで彼女いたことないから。」

「!!……そ、う、なんだ…?」

驚きを誤魔化すように言ってみたものの、しっかりばれているに違いない。

まぁいいや。とりあえず座ってもらおう。

「柴楽海君、座らない?先生が持ってきてくれたドーナツ、あるんだけど。」

「そうそう。二人じゃ食べきれないから、柴楽海君もどうぞ。」

江填先生も加勢してくれたけれど、柴楽海君は首を振った。

「俺、甘いの苦手ななんで。」

分かりやすく警戒している。本当にどうしたんだろう?

「ねぇ、柴楽海君。今日はどんなことで相談に?別に好きなひとができたわけではなさそうだし・・・」

私が尋ねた途端、柴楽海君の体がこわばった。

綺麗な口を、血が出そうなくらいきつくかんでいる。

それから沈黙が続いた。

静かになった教室には外の鳥の声、葉っぱが風に揺られて立てる音が響いていた。

一時間にも思えるほどの長い長い沈黙の後、柴楽海君がゆっくりと放った言葉に、私は腰を抜かしそうになった。

「実は……」


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