まちがえた まちがえた

@nakamichiko

 タイアップ


「だから言ったんだよ、タイアップは嫌だって。僕はそっちが調べた通りにに描いたんだから」


「すいません、来月号に大々的に謝罪文を・・・」


「今どんどん入ってきてるんだ、もう、ブランド本社はどう言っているんだ」


「謝罪するとイメージがと・・・」


「冗談じゃないよ、そちらの写真通りに描いたら、あとからクロスの向きが違うって

どういうこと! 」


「その・・・海外の本社としたら、日本向けにクロスを変えた方がいいと判断したみたいで。左前は縁起が良くないとか」


「バックの飾り紐だろう? 最近外国人が日本の事知りすぎてるんじゃないのか、もう・・・当の日本人は本物の向きと間違えが逆だって言っているのに」

 

以上の会話は僕と編集者の話です。さてこのことから、僕の職業はなんだかわかりますか? しばらく考えてください。まあ最初はファッション関係者だと思うかもしれませんね、答えはブーです。あとほんのちょっと考えてください、頭の体操です。






さて、当たった人もいるかもしれませんね。

僕はいわゆる「間違い探し作家」です。雑誌などに載っている右の絵と左の絵の違うところを探すあれ。今までのくだりは、要は女性誌の間違い探しにブランドの新作バックを使ってくれと頼まれたので描きました。バックの飾り紐のクロスの向きを間違いの一つにしたら


「間違っている方が本物の向きだ! 」


とクレームがびっくりするくらいに来たって話なのです。その雑誌にでかでかと正解が載っているから、そりゃクレームもしやすい訳でして、こちらは炎上寸前。その効果があってなのかわからないですが、バックは売れているらしいです。だからと言ってこちらに「すいませんでした」とお詫びに本物が送られてくるって思っているのは、うちの奥さんだけでしょう。間違い探しとは全く関係ないところで、こっちは神経擦り減っちゃった。


 僕は子供の月刊誌などにも書いていますが、最近彼らもすごいのです。とても細かなところを指摘してくる。

「間違い探しの中では正確に描くのは難しいでしょうが・・・」

という素晴らしい心遣いまで見せてくれる場合もあります。

以前絵本作家から

「子供はとてもきちんと見ているからね、車とか電車だとかを図鑑のように書くときは、絶対に気が抜けなかった」という話を聞いたことがありました。今はその点はほとんど写真になっているからいいようなものですが、結局絵を描くって簡単なことではないな、と思います、何とかこれで食べられるようになった今でもです。


「息抜きできることはないかな・・・」


と思っていたら、身に覚えのない災難なので、天の神様からの救いか、急に奥さんが長期的に家を空けることになりました。彼女の妹の出産の手伝いをするはずの姑が、足を骨折して入院、急遽行かなければならなくなったのです。別に夫婦仲が悪いわけではないですが、正直一人か、小学生の息子と二人でゆっくり過ごすのもいいかなと思っていたのです。


「お父さんと二人で旅行でもしない? 」春休み中で、桜はまだですが、梅は咲いているであろう京都。すると

「うーん、京都、来年修学旅行で行くことになっているから。それに、みんなと遊びたいから、やっぱり行かない」


妹は表彰されるぐらいの子だくさん、遊び相手は十二分にいるので、その魅力に彼は勝てなかったのです。まあ小学生が京都見物したい、とはなかなか言わないでしょうから、この点は強要しても始まりませんので、一人でそそくさと旅の準備を始めました。

  

 京都の取材はもちろん仕事の一環です。旅行雑誌からの依頼で日本の名所というテーマなので、絶対に外すことのできない場所ですから、ゆっくりと見物したいとは思っていました。


「息子を連れてこなくて正解だったかな」


と神社仏閣、美術、博物館巡りを心置きなく楽しめ、その日その日でホテルを変えてというお気楽旅。その最中に、例のバックの謝罪文も載って、心ハレバレとしていましたが、家族に電話すると

「みんなで季節外れのインフルエンザなの」と大変なことになっていました。

「手伝おうか」ともちろん言いましたが

「逆に来ない方がいい、うつったらそれはそれで面倒だから」という言葉を聞いた時、なぜか一抹の寂しさを感じました。

と子供のことで一つ思い出したのです。


「あ! とし君、確か京都に引っ越したって言ってたな」会いに行くのにちょうどいい機会です、お礼もたくさん言いたい人、彼は小学生ですが。


 この仕事をしていて、ファンレター、というかメールをもらうことも時々あります。彼はその筆頭、その威力は自分にとって横綱クラス、最高の「癒し」なのです。けなされたことなど一度もない、今回はここが良かった、とか難しかったとか、子どもらしい素直さがたまらなくうれしい今日この頃。絵が好きなので、自作の上手な間違い探しが送られてきたこともありました。少年誌の編集者に見せたら

「これ、上手ですね」と感嘆して、コピーをして持って帰ったことなど、彼にまつわる思い出はたくさんあります。でも今まで一度も会うことなく、遠くに引っ越してしまいました。今回の事でも


「お母さんも先生を責めるのはおかしいと言っていました」という親子でのうれしいタッグを組んでくれているようです。ですが彼はずっと褒めてくれるので、あまりにそれに甘えてはいけないと、メールを読むのは「特別なときだけ」と決めていたのです。今回も実はぎりぎり我慢をしていた次第なのです。


「これこそ天のお導きか、住所は手帳に書いてあるしと・・・、意外に近いな、行ってみようか」と心ウキウキで行こうと思いましたが、先に今までたまった、とし君のメールを読むのが先だと、喫茶店に入って確認をすることにしました。


「なんだ? 」


自分でそう口に出して、しまったと思ったのですが、近くのテーブルの人は素知らぬ顔で、聞こえていないふりをしているようだったから助かりました。とし君のメール内容があまりにも不思議なものだったのです。


「先生、僕の家でも間違い探しが起こっているようなのです。お母さんが仕事なので、僕が先に家に帰りますが、なんだか、誰かがいたような感じもします。最初は単身赴任をしているお父さんが急に帰って来たのかと、家じゅう探しました。お母さんは気のせいだろうと言います。試しに家の状態を写真に撮って比べてみましたが、確かに変わった様子はありませんでした。お金を置いてある場所も、全く触った感じは見られません。それでも気になったので、僕は自分の部屋の写真を撮ってみました。すると明らかにベットの上の布団の状態が違うのです。僕もきれいにして出て行ったのですが、それよりさらにきれいになっているのです。何ヶ月か前お母さんが

「お父さんが帰ってくるから、家をきれいにしてもらおうと思って、ハウスクリーニングを頼んだのよ」と言っていました。その日は僕は友達と遊びに出かけていなかったのでわかりませんが、そのあと、頼んだことはありません。昨日わざと布団の上に本を何冊か置いてみました。順番は変わっていないのですが、一番上だけ、ほんのちょっと斜めにおいていたはずなのに、それがきっちりとなっているのです。もちろん動物は飼っていません。どうしたらいいのでしょう」


読み終わってすぐにタクシー乗りました。この旅での初乗りです。


 すぐにとし君の家に着き、インターフォンを鳴らしました。室外機が回っているからいるはずです。一回目は出ない、二回目も出ない、三回目、四回目でやっと声がしました。「はい」とても小さく暗い声でした。

「きみがとし君だよね」

「そう・・・ですが、あなたは?」

「僕は」と名前を名乗りました。

「いつもありがとう、優しいメールをくれて。ごめんね、今回のことでいろいろあって君のメールを見てなかったんだ。怖かっただろう、ちょうど京都に来ていたからやってきたんだよ」

「うそだ! 」強い声がして

「先生が来るわけないじゃないか、わざわざ京都まで、お前が犯人なんだろう、警察に言うぞ! 」

と続けて叫んだので、どうしようかと思いました。名刺もないわけではないですが、それでは信用してもらえなさそうだったので

「今から絵を描くから、それを見たら信用してくれるよね」と言って持っていたスケッチブックに(画家だから持ち歩いて当然)今月号のとし君が見ているはずの犬の間違い探しを描きました。誰でもわかる犬の模様の間違いです。玄関のドアの新聞入れに入れるとすぐガチャガチャと取り出す音、そのあと


「あ! すごい本物だ! 」と言ってドアを開けてくれました。

「先生! 」抱き着かれてびっくりしましたが、本当に怖かったのでしょう、久々に子供の頭を撫でました、息子はもうだいぶん大きくなったので。



「本当にごめんね、気付いてあげられなくて」

「いいんです、多分明後日、日曜日にはお父さんが帰ってくるので」

「それはよかったね」自分の息子が他人にこれだけできるだろうかと思うほど、

コーヒーやお茶菓子を出してくれました。

「この部屋監視カメラが付いているよね」

「よくわかりますね、この前付けたばっかりなんです、一応この部屋にしか高価なものはないから。お父さんがそうした方がいいって」

「僕は警備会社で働いていたことがあるかあらね、音声はないタイプだね、じゃあ、君の部屋見せてくれる?」と言って、すぐ横のとし君の部屋に入りました。

「いい部屋だね、凄い、マンガもいっぱいある、いいねえ」僕はその辺にあったマンガを一冊取って

「これ、向こうで読ませてもらってもいいかな?」と早々に部屋を出て、最初にいた応接間に戻りました。とし君はもちろん怪訝そうな顔をしていましたが、僕は漫画を広げて言いました。


「とし君、ちょっと横に来て一緒に漫画を見よう」

「はあ」しぶしぶやってきて座ったとし君に


「いいかい、僕は今からずっと漫画から目を離さない、君は一緒に見ているふりをして、驚かないで、僕の言うことを聞いて、いいかい? 」

「はい」

少し小さな声で僕は話し始めた。

「あの部屋には高性能の盗聴器と監視カメラが設置されている、今のものはスマホで見ることができるから、それで見ているんだろう。子供部屋に何かがあるんだ、きっと。お母さんがハウスクリーニングを頼んだって言ってたよね、それから何かあった?」

「そういえば、なんか水回りがおかしいからって、業者が来たことがあります。一回じゃすまないって・・・」

「うーん・・・それは怪しいね・・・」二人で時々顔を見合わせ、漫画を読むふりを続けていると、玄関で音がして「ただいまー」と声がしました。とし君のお母さんに自己紹介を早々に済ませ、状況が呑み込めていない中

「三人で食事でも、おごりますよ」と、とにかく外に出ることにしました。


「すいませんね、ここで」

「いえ・・・」お母さんはもっと高級な所を想像し、希望もしていたに違いありませんがとし君が

「スパゲッティーがいい、あそこなら間違い探しもできるし」という子供らしく、今までの不安を跳ね返すような元気さで言ったので、某有名イタリア料理チェーン店に

行くことにしました。幸運にもお客さんが少なかったので安心しました。店に入ってからはとし君は間違い探しに専念してもらい、お母さんと話をしました。


「何か、違和感はありませんでしたか?ハウスクリーニングの時や水回りの時に」

「うーん」監視カメラと盗聴器のことは話したので、あとは詳しく聞くだけです。

「そういえば、ハウスクリーニングに来た人がその、一人は背が高いイケメンだったけれど、もう一人は大丈夫かなっていうくらい年の人で、若い人だけがテキパキ動いていたみたい。色々なところがきれいになってびっくりしてるんです、今だに」

「例えば?」

「洗濯機の洗剤投入口とか」

「ああ、使わなくなるところね」

「先生よくご存じ」

「僕在宅ワークなんでね」

「そういえばそうですよね、画家ですから」等という会話もしながら食べながら、間違い探しの出来も評価しながらということを続けていると

「あ! 」とお母さんが声をあげました。

「そういえば先生、クリーニングの会社と水道の会社は別なのに、似ていたような気がする。水道会社の彼、凄く帽子を目深にかぶっていたけれど」

「そうですか! どんな顔でした? 」時間の少々かかる作業を始めました。


 一方、そのころとし君の家では大変なことが起こっていたのです、あとから聞いた話ですが。


「きっとびっくりするだろうな、部長もいい人だ、「できるだけ早く帰りたいだろう? 仕事も片付いたし、送別会も終わった、帰るといい」か」


とお父さんはガラガラとお土産しか入っていないスーツケースを引きずっていましたが、家の数メートル手前で異変には気が付きました。


「え! だれもいない! そういえばこの手のサプライズは良し悪しだって言う人もいたっけ・・・」しばらくして、やっと電話をかけたそうです。


「え! 今家の前なの! 大変! 食事の用意何にもしてない! とにかくここにきて! 」とお母さんもとし君も大興奮で、僕もとても心強く思いました。そして十数分経ったでしょうか。店の外で待っていたとし君と一緒にお父さんが満面の笑みでは入ってくるのが見えたとたん、今度は茫然と立ち尽くしてしまいました。


「お父さん! ちょっと待って! 」と僕はスケッチブックに絵を描き始めました、


似顔絵を売っていたこともありましたから、とにかく早く特徴を、それより、とにかく今の表情を描きたくて必死に鉛筆を動かしました。お父さんもだんだん自分が考えている悲劇的なことではないような気がする、とは思っていたようですが、今度はとし君が絵を見るために、喜んで僕の方に来たので、その劇的な表情は思った以上に長くなって助かりました。

「よし」と僕が鉛筆を置くと、お母さんもとし君も感嘆の声をあげてくれました。一歩一歩近寄ってくるお父さんのうつろな表情も、そのまま撮りたいと思うほどでしたが、とにかく誤解を解くのが何よりも一番だと、今までのことを話しました。



「そうですか・・・大変なことになっているようですが、ただこれからどうしたらいいでしょう」僕たちはデザート、お父さんは食事という形にはなりましたが、とにかく合流出来てよかったと思い、

「簡単ですよ、警察に行きましょう。お食事がすんで、休憩されて」

「え、でもなんの証拠もないですし」と母さんの心配をよそに僕は自分の携帯を見せました。そこには二人の男の写真

「そうだわ、この人とこの人! 」

彼らは有名な窃盗犯だったのです。



「あの時職務質問されて、そりゃそうだろう、と思う反面それはないだろうとも思いましたが、今役に立つとは思いませんでした」


実は若い頃、事件現場に居合わせて、同じように似顔絵で犯人逮捕に協力できたことがあったのです。その時のつてをたどって彼らに行きつくことができました。

「先生、色んなことをしていたんですね」お父さんから感心したように言われましたが、すぐに警察の方から話が始まりました。

「彼らは全国各地で窃盗を繰り返していましてね、年配者はプロ中のプロです、一度家に入ったら、その家の合鍵なんてあっという間に作ってしまいます。が、体調を崩して一か月ほど前亡くなりました。ほとぼりが冷めるまで、他人の家に盗んだものを隠すという変わったことをする人間でしてね、多分若い方はどこに隠したか教えられてないままだったんでしょう、協力していただけますか?」

「はい」と僕も含めたみんなで答えたので、警察も驚いていました。



「こんな事になるなんて、帰ってそうそう、家でゆっくりも出来ない」

「仕方がないじゃない、不幸ごとなんだから、あなた喪服持ってくれる?」

「お母さん僕はどんな服がいいの?」

「火曜日まであなたがお休みでよかったわ、ゆっくりできる」


とし君の家ではお芝居が始まっていました。家じゅうに聞こえるような声で。

警察がお父さんに高性能の監視カメラを渡して、設置してくれるよう頼んだのだのです。その様子を覆面パトカーの中僕も見ることになった、というか、無理やり、駄々をこねるように見させてもらっているのです。


「メールを見てすぐに気付きましたよ、案の定部屋に入ったら盗聴器とカメラ。だからすぐ部屋から出たんです。とにかく犯人を見つけて捕まえないと、ずっと危険がこの家族に付きまとうでしょう?」

「そうです、先生のお陰です」家族一致は美しい。

「でも、同行させてくれは困ります、一般市民を巻き込むことなんて、ドラマじゃないんですから」

「邪魔はしません、不用意に出もしません、僕は格闘技なんてできないですから。とにかくお願いします」強い意志も無ければいけません。

「今回だけですよ」と念を押されました。

とし君の家から少し離れた所から監視をしていましたが、その日はとし君家族の安全な所への非難を見届けただけでした。


 次の日の朝、車で寝ていたところに誰かがやってきて

「新聞受けをじっと見ている若い男がいた」と告げられました。

「今日やるかもしれない」と言ってそんなに時間がたっていないように思いましたが

「新聞を取って家に入りました」と無線で連絡があり


「なぜ新聞を取ったんですか?」僕には疑問でした。

「いるように見せかけるためかもしれません、新聞がとられていないのに、中から物音がするって変でしょう?じっくりと探すつもりでしょう」

応接間のカメラの前をすっと横切った映像が映ったと思ったら、すぐさま消えて子供部屋に向かったようで、映像も子供部屋に切り替わりました。


「そうか、犯人が設置したもので見ているんだ、皮肉なものだ」と口に出せる雰囲気ではありませんでした。ただ犯人の声が


「どこに隠したんだ! 簡単で、わかりやすくて、開けないものって言ってたよな」その言葉を蹴り返しながら、とても丁寧に探していました。きちんと片付けながら探していたので


「几帳面な奴だ」と警官も久しぶり声を出しました。そして犯人が高い所にある押入れを覗き込んだとたん


「突入!」と言って瞬く間に犯人は大勢の警官に取り押さえられてしまいました。


「ここにいて! 」と言われてしばらく映像を一人で見ていました。犯人は観念したようだったので、悪いとは思いましたが、僕もとし君の部屋に行きました。

見ると、若くていかにも現代的な容姿の子でした。彼の顔を見たかったというのもありますが、やって来たのはそのためではありませんでした。


間違い探し、何かを探すのを仕事にしているせいでしょうか、何となく隠し場所の想像がついたのです。


「まだ見つからないのでしょう? 多分ですが、見当は付きます」


「どこ!? 」犯人の声も警察官たちの声も聞こえました。


「簡単で、わかりやすくて開けないもの。とし君が言っていたんですよ、きっとお母さんは僕が女の子だったらよかったのにって思っている、って」


「あ! わかった! 雛人形だ! 」警官の誰かが言いました。


「そう、自分の部屋にしまってあるって言ったいましたからね」


大正解だった。多分お母さんが嫁ぐときに持ってきたのでしょう、お内裏様お雛様の箱ではなく、他の小道具たちが入っている中に


「あった! 宝石! 」びっくりするような量の宝石がありました。後でお母さんに聞いたら、何年か前までは、お内裏様とお雛様だけは飾っていたそうです。でも、とし君がちょっと嫌な顔を見せたのでやめたのだと、近所の人にも話したそうです。それまで知ってのことだったとは思いませんが。


 犯人も捕まり宝石も戻り、その場はみんな喜びに満ちていました。たった一人を除いて。僕は彼に言いました。


「君はまだ若い、掃除はとても上手じゃないか、良いことを伸ばしたほうがいい。でも悪いことは、小さなうちにやめておくことだよ」


そう言って自分は京都を後にしました。

犯人は、僕が誰なのかと尋ねたので、警察の人はこう言ったそうです。


「小さな間違いが一番大事だと思っている人」と。





「いやー先生、今度の間違い探しの、あの男の表情、大好評ですよ。不倫現場を目撃した男って、ちょっと心配するぐらいですが・・・大丈夫ですか?」

「自分の事じゃないよ、まあ色々大変だったけど、旅行は勉強にはなったね」

「ちょうどよかったじゃないですか、災い転じてですよ」

「いいように言うなあ、もう」

とし君の家族から感謝のメールが来ましたが、最新の返事はこう

「あのモデルがお父さんだってことは秘密にしておきます」


一件落着。


「で、他社ですけど、京都の間違い探しは順調ですか? 」

「それがねえ・・・とにかく編集者が奈良出身で、シカを絶対書いてくれっていうんだ、つまりその・・・わかる? 問題が」

「ふーん」

「さすが、お後がよろしいようで」










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