第43話 ―Continue to the next volume―
夜がふけるゲルヘルム。
辺りで、何かに弾かれたように吠え始める犬や獣…。
そして、地響きを伴い、多くの影が街を走り回る。
…悲鳴が上がり始める…
その数は、一か所ではない、街全体から怒鳴り声や悲鳴、そして、鼓舞する声。
静寂を破り、さざ波のような声がどんどんと大きくなり、そして、街中を包み込んだ。
誰かが叫ぶ、「オークだ!」と…
誰かが叫ぶ、「助けて!」と…
そして…
街外れの宿舎2階…そこに寝ているのは女性が3名。
その騒めきに、一人の小柄な少女が目を覚まして窓から外を見る。
街中から火の手が上がるのが見え、家々から人が飛び出してくるのが見えた。
何かの気配に視線を下に移すと、目の前の路地を走る…マモノ…が見える。
その体は大きく筋肉質であり、胸の筋肉と腹の筋肉が異常に形をはっきりとさせている、顔は鼻の下が長く、鼻はつぶれていて鼻孔が横に広く大きい、眉毛も太く髪もある、体調は2メートル程であろうか、しっかりとした眼光である、肩当てと肘あてをつけ、心臓を守るように胸当てが付いている。
下半身は布切れ一枚で、収まり切れない男の象徴がちらりと見えた。
膝当てと
オークである。
何体かのオークが過ぎると、先ほどとは違う、兜をかぶり、その兜からは、大きくつぶれた鼻と眼光の鋭い目、真一文字に結ばれている大きな口の鎧を着ていて、体ほどの大きな剣を背中に携えたオークがゆっくりと歩いていた。
すると、ふいに足を止め、少女へと視線を移すオーク。
少女は口を押さえて身を屈めた、少しの時間…その場で
ガッシャ―ンと大きく窓を壊して、さっきのオークが入って来た。
咄嗟に短剣を出す。
向かいに寝ていた2人の女も目を覚まし、一人は盾と大剣を手にした。
もう一人は、神官なので肩を抱いて小さくなった。
オークはその部屋を見渡すと、肩を抱いて身を小さくしている女に標的を決め動き出す。
その動きに、盾を前に出して女が女神官を守るが、盾ごと払いのけられると、着ていた服も破れて、胸があらわになった状態で部屋の壁に叩きつけられた。
オークが神官の女を担ぐと同時に、その部屋に男3人が飛び込んできた。
一人はアサシン、そして、一人は魔法使い、もう一人は剣士で剣を前にだして中に入ってくる。
その男らを見てオークがニヤリと笑うと、大きく息を吸い込んで咆哮をした。
その咆哮は部屋…いや、建物全体を揺るがした。
耳を塞ぐ一同…最初に魔法使いの男がその場から逃げると、剣士…そして、アサシンの男が腰を抜かしながら逃げ出した。
小柄な少女は、短剣を握りしめてオークの背中に飛びかかるが、オークにはたかれ、壁に穴をあけて廊下へと飛ばされた。
盾を持ち直した女は立ち上がり
「ヌエフ…を返しなさい」と言葉にすると。
オークは、再びニヤッと笑い、そこにあったベッドに手を当てると、天井へと突き上げた。
ベッドは、天井に当たり粉々に崩れる。
それを盾で防いでいるうちに、オークは自分が入って来た壊れた窓へと進み、女を見て言った。
「『オークプリンス』の為に!また来る」と言葉を残し、窓から飛び降りた…。
下に着くと配下のオークに女を預け、そして、建物を見上げる。
穴から盾持ちの女がのぞき込む。
その女に向かって、顎をしゃくりながら鼻を3度鳴らしてその場を後にした。
去ってゆくオークの背中を見ながら崩れる女戦士…。
そのそばに、傷を負った小柄な少女が来ると、彼女の傍にヘタっと座り込んでうつむいた。
…『オークプリンス』の為に…。
その言葉だけが彼女らの頭をかけめぐっていた…
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遥かなるアブスゲルグ Ⅲ オークプリンス編
遥かなるアブスゲルグ Ⅱ -3人の仲間と巨大人喰鬼種『ギガグール』- さすらいの物書き師 @takeman1207
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