第10話

10

金城は夜の公園でブランコに乗っていた。金城は天を見上げた。じっと見上げていると、天から神の声が聞こえてきた。

「金城よ・・・」

「神様・・・」

「私は辿り着いたのでしょうか」

「お前の人生は終わったわけではない。辿り着いたように見えてもまだ先がある。モーセは約束の地に入れなかったが、弟のアロンが約束の地『カナン』に入れたように、お前も約束の地に入れる。それは、お前がこの世での任務が終わる時だ」

金城はブランコから降り、ひざまずいて祈った。

「天にまします我らの父よ、願わくは御名をあがめさせたまえ、御国を来らせたまえ、みこころの天になるごとく、地にもなさせたまえ。我らの日用の糧を今日も与えたまえ。我らに罪を犯すものを我らが赦すごとく、我らの罪をも赦したまえ。我らを試みにあわせず悪より救い出したまえ、国と力と栄とは限りなく汝ののものなればなり、アーメン」

金城はもう一度天を仰いだが、神の声は聞こえなかった。金城はそのまま勤務地である東京消防署に帰ることにした。

(完)

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メサイア ヨシヤン @0715y

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