第3話 無との対話①

「二度と、諦めたくないから。」

彼は誓った。

その日、その場所で、彼は誓った。

彼の父親は交通事故で、彼が丁度、中学を卒業した頃に死んだ。


――そして其の時、母親は不治の病に侵され、意識が薄かったり通常だったり……、意識が不安定な状態で日々生きていた。

その病室で、彼は誓ったのだ。

彼が長年追い続けた夢――この宇宙を開拓し、そこからあらゆる事柄を知り続けるだけの、自身の夢を叶えることを。

もしそれが仮に、人の役に立とうが役に立たなかろうが、そんな違いはどうでも良かった、

とにかく、彼は誓った。

その夢を必ず叶えてみせる、と。


……だが、その最中にそれは起きた。

それは、彼が高校を卒業する僅か数日前に、彼へと真っ直ぐに降り掛かった。




――時間が経つごとに、下がり行く其の数字。

それを見て、彼は絶望の表情で、その目には涙も浮かべながら、ただ棒立ちしていた。

「こうなってしまったら、もう我々も打つ手がありません。」

医者が言った。

……もっとも、その数字というのが、母親の心拍数を表したもので、彼の母親の心拍数が悪くなり始めたのはつい1時間前のことだった。

容態が突如激変し、彼女は失神してしまったのだ。

そしてその心拍数は、時が経つにつれ遅延していった。

血圧ももう、計ることは困難だ。

だが彼女は息をわずかにだがしている。

それが、彼女が生きていることを明確に示している。

彼はその事実に安心感を抱き、小さなため息をついた――


――その時だった。

母親は苦しそうな表情をしながら、力強く息を吸った。


……最後の呼吸だった。

脈拍を表した数字が急激に減少し、彼女が吐き終えると、酸素濃度はあっという間に0へと下がった。


医師が彼女の目蓋を上げ、ライトで照らした。

その瞳孔が狭まる様子はない。

「御臨終です。」

医師はそう告げた。

その言葉を聞いた彼は、ガクリと膝を落とし、その場に泣き崩れた。

家族が死ぬのは二回目。

父は交通事故に遭って死に、母は病気で死んだ。

コトコトコト……。そんな最後の細胞の働きの音が鳴る。

時期は違えど、家族は家族。

父の時は彼が同時に入院もしていたため、あとから知らされ、葬式にも行けず、

しかし今回は、母は目の前で死んだ。

その事実が彼を哀しませた。

……数日後、葬式が行われた。

母親の体は焼却炉によって 少し焦げた骨と化し、その焼けた臭いが彼の感情を混乱させた。

それから2日程経ち、彼は祖母の家に移り住む事になった。

思い出の場所を離れるのは辛い事だったが、仕方がなかった。

まだ、夢を達成していない彼を見ながら、死んでいった母の顔が、彼の脳裏に焼き付いていた。

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僕らだけしか居ない星 柊木緋楽 @motobakaahomaker

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