裏表少年と笛吹き死神 第9話 (あんかけ 作)
……塩?
まさか……
あの話を……
終わった……
僕、もうここまでなのか……
「……少年?」
「あっ……えっと……」
「どうして困っているんですか?」
「……そりゃ、そうでしょう……。」
殺られる……。
間違いなく殺られる……。
「……やっぱり、塩は……」
「ひっ……」
「……ゆでたまごにかけるのがいいですね!」
……はい?
「……そんなこと話してたんですか!?」
「まあ、盛り塩の件で急に塩を何にかけるかについて考えてしまったもので……あなたのお母さんと話していたんですよ」
「……そういうことか、何だぁ」
ほっとした……安心……
……も、束の間
「……と言うとでも?」
えっ……。
「ボロが出ましたね、少年。今、『そういうことか』と言いましたね?正直に答えろ。何のことだと思ってたんですか?」
……ウソ。
ウソをつかなきゃ。
もっといいウソを。
「……盛り塩を置いたのお母さんだから、てっきりお母さんにお仕置きしたのかと思って……」
「悪い子ですね」
「はい!?」
「ウソが下手な少年ですね、全く」
……コイツ……気づいてたのかよ……!
「……とっくに僕のウソに気づいていて、それでいて騙してたんだね」
「そうですね、でももうこの騙し合いはおしまい」
「……僕、悪い子だから殺されるんですか?」
「ええ、もちろんお仕置きしますよ。あなたのお友達と一緒にね……。」
鎌を振りかざす死神さん。
「……死神さんと一緒に遊んだ時間、楽しかったのになあ……。」
怖いからって、精いっぱいのウソをつぶやく。
そんなことしたって運命は誰にも変えられないのに。
こんな世界だからみんなこの死神さんにお仕置きされるんだよね──
「……死神さん?早く、その鎌を振り下ろして下さいよ」
死神さんは鎌を振りかざしたまま固まっている。
「……本当ですか?」
……え?
死神さん、もしかして信じてる?
バカじゃないの?
「……いや、死神さん、今までのウソは見破ったのにこのウソは見破れないんですか?」
「気のせいでしょうか……。少なくとも……今のはまるで真実のように聞こえましたよ?」
「いやいや、そんなことないですよ!今までの時間はウソの時間だったじゃないですか!ウソで仲良くなって、ウソで遊んで!ただのハリボテじゃないですか!ただの楽しいウソじゃ……楽しい……ウソ……?」
あれ……
おかしいな……
僕……ウソが楽しいって……
「……僕も好きでした、少年と遊んでる時間」
「えっ……?」
「僕を騙し続け、塩で撃退しようとした罪は大きい。でもあなたは僕に娯楽をくれた。時折それはウソなしで、本当に楽しんでいたんじゃないですか?」
「……。」
……そうかな。
確かにウソのことも考えてたけど、本当は、もしかしたら……
「……いい考えがあります。社畜地獄に落ちましょう!」
「……はあ!?社畜とか嫌だなりたくない」
「とりま死んで下さい!」
「えええ!?いや何それおかしい!え、マジで殺っちゃう?待って、心の準備が」
「えーい☆」
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」
……あれから数日。
僕の友達は、死神さんの友達の元で働いている。
といっても、重要な役割ではないらしい。
まあ重要な役割って結構グロいからなぁ……。
脇役で何より。
……えっ?僕?
僕は……
何故か死神さん……いや、先輩さんの後輩になりました……。
僕が進んでやったわけでもなく、先輩さんが無理矢理入れさせたというか……
でも、意外と悪くないお仕事。
僕ら死を司る神こそが、人を殺してでもこのシンデレラな世界を変えるんだ。
先輩さんに、似てきた。
笛は吹けないけどね。
「……後輩、今日の仕事はちょっと難しいですよ。相手がウソをついているかついていないか見破らねばならないし、ウソの濃度だって測定しなければなりません。」
「そんなの、騙し合いで慣れてますよ」
「……言うと思いました。行きましょう!」
「はい、先輩さん!」
僕は悪い子だけど、良い子でもあったんですかね。
裏表少年と笛吹き死神 あんかけ(あとち) @Ohoshisama124
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