エピローグ

エピローグ「僕は生きていく──」



 サラサラサラ……と、耳に心地よく、流れる川のせせらぎを背景に赤い髪の少女が旅の汚れを落としていた。


 パシャリパシャリと輝く飛沫が少女の張りの良い柔肌で跳ねていく。


「あはッ」


 足元で戯れる小魚の群れに笑顔を零し、そーッと一匹に狙いを定めるも、途中で気配に気づかれササーと逃げいていく様すら楽し気に見送る。


「いい気持ち……」

 彼女は、一糸まとわぬ姿で川辺に腰を落としている。

 トプン……と、足を流れに浸して、片膝を抱え込むと、美しい水とそこに移る抜けるような青空を眺めていた。


「~♪」


 冷たい水の流れを楽しみながら、鼻歌混じりに水を浴びる少女───ザラディンは気持ち良さそうに喉をならしていた。

 その傍らには、護身武器にしては少々大げさに過ぎる大量の銃器に3本の剣に刀。


 ザラディンはそれらを愛おし気に撫でながら、流れに足をばたつかせる。


「───僕は生まれ変わった。……また、一から人生をやり直すことになった」

 この世界を───。

 この少女の体で……。

 再びザラディンとして、無垢な女の子として───。


 …………だけど、


「だけど、君たちの復讐を果たす。それだけを頼りに生きて、そしてその過程で、多くの人を殺めてしまったよ…………」


 仇敵、怨敵、公共の敵───。


 だけど、もう誰もいない。

 ザラディンの切らんとせん人物は全て死に絶えた。


 だからもう……。


 もう、誰もいない。

 カサンドラもオーウェンも……。

 ベリアスもエルランもゴドワンもメルシアも……グラウスも───。


 そう、僕の仲間も友達も、

 そうとも、僕の仇敵も、


「───みんな死んだ。殺した……」


 仲間も等しく、

 友達も等しく、

 仇敵も等しく────。


 平等に丁寧に、一人残らず……。


 あとはもう───。

「もう、何も残っていない。何も残っていないよ……。なぁ、僕はどうすればいい? ねぇ?」


 教えてよ、


 銃を撫でて「カサンドラ」と呟く、

 刀を撫でて「オーウェン」と呟く、


 どうして僕だけ………………。


「ふと、思うんだ……。僕が転生したように、ひょっとして……君たちも────どこかにいるんじゃないのかって?」


 ……なぁ?

 そうなんだろ?


 どうして、僕だけ────僕ひとりだけ転生したんだ?

 なぁ───。


 ふた


「おーーーーーい! 嬢ちゃん! そんなとこで、素っ裸でいると丸見えだぞぉ!」


「ひぇッ!」


 突然川の方から声を掛けられる。


 心は男だが、女に生まれたせいか、人並みの羞恥心はあるのだ。

 慌てて聖剣を抱いて、小さな体を隠す。


 声の方向は───あれだ。川の流れに浮いている小さな川船だ!


 ありふれた形の平底小型の川船は、この辺の主要な交通手段の一つなのだろう。

 普段着のたくさんの乗客がいて全員がザラディンを注目している。特に男はニヤニヤとまぁ厭らしく笑っていやがる。


 ううう……完全に見られた。


 船頭の爺さんももっと早くの声をかけてくれればいいものを、わざわざ丸見えの所で教えてくれる意地の悪さ。

 もっとも、川の流れが速いせいか、老いた船頭は川船の舳先に立ち、竹竿で流れをコントロールするのに必死だったのかもしれないけど……。


 だが、乗客どもはその限りではないはずだ。

「うぅー……」


 身体を聖剣で隠しながらザラディンは唸り声をあげる。

 それを益々見ようと乗客連中が集まり始めた。


 実に暇な奴らだ。

 おかげで乗客は船の縁に集まっていやがる。


 老若男女多数。

 ジジイもオッサンもガキンチョも、皆ニヤニヤしてやがる。


「くそぉ! 僕の裸は安くないぞ!」


 抗議の声をあげるも、川の中と川の岸部ではどうにもならない。

 くっそー!


 ……それにしても、ませたガキもいやがるな。


 ──船の後端に腰かけるのは、カップルらしき男の子と女の子の二名。

 年の頃はザラディンとそう変わらないだろう。


 ニヤニヤと笑う顔。

 隣では女の子もニコニコと──……って、をい。


 なんで女の子が僕の裸を楽しんでいる!?

 そっちの趣味のあるかね!?



 僕はノーマルだぞ!



 腹が立ったので素っ裸のまま立ち上がると、裸体が見えるのもおかまいなしに聖剣をヘラのようにして、ドバッシャーーーン! と盛大に船に向かって川の水をぶっかけてやった。


「うひゃあああ?!」

「つめたッ!」

「うわ、お、おちる!!」


 ざまぁみろッ!

 ドスケベどもは濡れちまうがいい!


 と、その時。


 ───ザラディン。


 ……二刀と、

 ……20丁余の拳銃を誰かが触れた気がした。


「え?」


 ────流れる川にのって、例の二人の男女がチラリと声をかける。


 ざばぁ! と、かかる水しぶきの中、悲鳴を上げる乗客だらけだと言うのに、


 若い二人の男女はひらりと水を躱と───。


 ニヤリと不敵に笑う一組の男女は、

「───あたらなければどうということはないッ」

「───あたらなければどうということはないッ」


 ッッ!


 う、うそ…………?


 ま──────。


可愛かぁぃくなっちまって」

「あら? ザラディンは昔から可愛かったわよ」


 ま、

 まさか……!?


 お、おい!


「またな、ザラディン」

「生きてりゃそのうち会えるわよ」




 ニヒヒヒと笑って手を振る二人────。




 ……ま、まって──。

 ──待ってよ!!




 じゃあね~♪


 そんな感じで川の流れに消えていく二人。




 ザラディンは声のかぎりに叫ぶ────。


「待ってよッッッ!!」


 また、会えた。

 友に……。

 戦友に……。





 親友に────!!



 ねぇ!!



「オーウェン! カサンドラぁぁぁぁあ!」







 また、会えた─────────!!







 オーウェン!!

 カサンドラぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!




─── あとがき ───

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14才の復讐鬼~「そのままで終わらせるものかよ。TS転生してでも復讐してやるッ」~ LA軍@多数書籍化(呪具師100万部!) @laguun

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