正月(私とアイツ)
こんな正月の日に、家族とは話さないで、私だけ部屋の中でアイツと喋っているのはどうなのだろうか。家族たちは年越しのテレビ番組を見ている、私はそれほど興味がないしちょうどアイツが「一緒に年越ししよーぜ」って送って来たから仕方なく答えてやった。
お互い彼女や彼氏がいないのも好都合だったし、腐れ縁か何かで、ずっと小学校から同じクラスにいる。恋愛感情は浮かばないのか?と聞かれて、ない、と答えると嘘にもなるがそれは嵐のようにやって来てはすぐに去るように、仮に長くいるような感情でも、私はこの関係を崩さないためにアイツには言わない。
要約すると、曖昧な感情で作られた関係だ。
ヴィーン、ヴィーン。揺れる電話、私は電話をとって、アイツの電話を出る。時間を見てみると、あと少しで新しい年になる。あと二分ぐらいだな。
「おっす」アイツがアホみたいな挨拶をして来た。
「なにそれ、アホなの?それともバカ?」
「ヒドイな、おい。こっちは彼氏いないお前のために一緒に年越ししようとしたのに」
そう言われてムカついたから、私もアイツにかましてやった。
「彼女も持っていない君にせめてもの情けで今日私が大切な時間を分けてあげてるの、感謝しなさい」
電話の向こうでアイツが笑うのを聞こえて私も気づいたら口元に微笑みが浮かんでいた。
「俺たちもうずいぶん長い間一緒にいるよな」
「なに?急に改まって、欲求不満?」少しドキッとしたけどなんか怖い、こんな真面目になって。
「いや違うし、この処女が」
「なに?童貞がなに言ってるの?」
お互いムキになって電話の向こうで「処女!」「童貞!」といがみ合っている。端から見たらただのサイコパスだろ。
なんかの戦闘シーンみたいになってお互い息が荒くなっていた。ああいうエロい息の荒さじゃなくて、本当に戦いの後みたいに。
「あ、もう過ぎちゃったんだけど」
気づいたら、時計がもう十二時から五分ぐらい過ぎていた。
「マジかよ、くっそーその瞬間にジャンプしようとしたのに」
「童貞の上に小学生か」
「男のロマンだ!」アイツはかっこいいセリフのようにそう言って、私は華麗に毒をアイツに吐き捨てた。
まぁ分からなくもない、私も小さい頃一度やって見たけど残ったのは人生を無駄にしたという後悔だけだった。
「今から、出てこれるか?」
「なに?私口説かれてるの?告白されるの?」
「ちげーよ、暇だからコンビニでも行こうぜ、そして公園でぶらぶらして」
「失業者じゃん」
アイツは朗らかなトーンで笑った、しばらく迷った、でもすぐに結論が出た。
「別にいいけど、襲われそうだから催眠スプレー携帯しないと」
「俺は不審者か、まぁ、それでもいいけど」呆れた風にアイツは言って、私は軽い服装にジャケットを着替えて、外に出た。親には友達と神社に行くと言った。
こんなアイツとの日常が、楽しくて仕方ない。けれど私は、心の何処かでアイツに、居場所を作ってあげているのだろう。
ただアイツ専用の、世界が。
私はこの感情をどうするのか、この嵐のような感情を。
その答えはーーーーー
短編 雷坂希濤 @kinami0402
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