第95話 追加:100%目指すと死ぬよ。職業としてやるなら80%以上をコンスタントに出せた方がいい。

書いていなかったことを思いだしたので追加します。


みなさんの中には、「100%を目指す」とか「全力を出し切る」とか考えている人がいるかもしれません。職業としての小説家を目指すのであれば、特殊な状況以外は止めた方がいいと思います。なぜなら心も身体も疲弊し、その割に得るモノはわずかだからです。ないと言っていいかもしれません。だって質は売れ行きや受賞を決定する主要な要因ではないからです。

受賞については繰り返しご説明した通りです。売れ行きもそうです。3千部しか刷られず、書店の棚に並ぶこともなく、書評で取り上げられることもなければどうやって売れるのでしょう?


第27話 生き残りやすい賞 1 受賞作の初刷り部数の多い賞は生き残りやすい

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888031782/episodes/1177354054888112519


自分から見て100%の作品まで質を高めてから応募したいとか思っていませんか?


この連載では作品の質には言及してきませんでしたが、ひとそれぞれあるいはレーベルや企業で尺度は異なりますが、質というのは存在し、なんとなくですが、計測されたりします。


小説に限らず、学問、スポーツあらゆる分野に共通すると私は思うのですが、80%までは70%くらいの人は努力すれば到達できて、90%くらいまでは半分くらいの人はなんとか行ける。それ以上はどんどん厳しくなり、振り落とされる。テストを考えてみてください。100点を取るのはひとつのミスも許されないのですごく大変です。でもひとつあるいはふたつのミスくらいまで許されるならだいぶ楽になります。100点と99点の間には1点以上の大きな隔たりがあります。1点の隔たりは上に行くほど大きくなり、下に行くほど小さくなります。


投稿する小説も出版する小説も80%以上をコンスタントに維持できればよいと私は考えています。100%をコンスタントに達成できれば最高ですが、そのための労力、時間、失敗した時の挫折を考えるときわめてリスキーです。80%なら年に4作刊行できるのに、100%だと数年に1冊になってしまうかもしれません。それでどうやって生活できるのはすでにベストセラー作家になった一握りの作家だけです。投稿者であればデビューは遠のきます。


そして最悪なことに80%以上の作品の質の違いを判別できる人はごくまれだし、売れ行きには影響しません。なにしろその100%という尺度は作家自身が自分の知識と経験、編集者や読者の反応から作り上げた世界でのものなのですから、その世界を共有していない他人にはわかるはずがないのです。作家と編集者が共に、これで100%と判断してもそれが他人に伝わるかどうかはわかりません。私の体験談の下記をご覧いただくとわかると思います。同じ編集部でも評価がまっぷたつに分かれることがあるのです。


第52話 「完成度は高いが好きになれない」完成度の高い小説、出版してもらえる小説、売れる小説の違い

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888031782/episodes/1177354054888166162

第57話 よく言えば通好みで、編集者の感覚を狂わすことがある?

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888031782/episodes/1177354054888170737

第76話 最高と最悪。真っ二つに評価が分かれたプロローグの実物

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888031782/episodes/1177354054888205226


テストのようにわかりやすいものでも、80%以上を目指すのはつらいのです。評価尺度がはっきりしない世界で目指すのは、精神の消耗が著しいです。しかもそういう時に相談する相手の編集者がどこまで本気で考えてくれているかわかりません。


第61話 2種類のよい編集者。売れっ子を連れてくる小判鮫タイプと、売れっ子を育てる人。前者の方がはるかに簡単。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888031782/episodes/1177354054888179217


質を上げるよりも数を書く方を優先した方がよいと思います。そもそも質を求めるあまり、完成できないとか最悪です。完成させなければなにも始まりません。

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