第61話 2種類のよい編集者。売れっ子を連れてくる小判鮫タイプと、売れっ子を育てる人。前者の方がはるかに簡単。

よい=売れる本を出す編集者には2種類あるようです。


売れっ子作家を連れて来て本を出すのは難しそうに見えますが、やり方は簡単です。人たらしの人なら売れている人を連れてこれますし、そうでなくてもたくさんのデビュー仕立ての新人作家に声をかけてプロットか原稿を預かればいいだけです。時々、アドバイスしたり、元気づけて、でも出版の話は進めません。期待を持たせるだけです。そして3年くらいして、その作家が売れていれば、「最初見た時から評価される人だと思っていました」とか言って出版する。たくさんの新人に声を掛けておけば一定の確率で売れっ子の原稿をゲットできます。ただし!


売れっ子作家を連れて来て本を出す編集者(小判鮫タイプ)は、ほとんどの新人作家にとってよい編集者ではありません。なぜならたくさん声をかけてたまたま成功した人の本を出すだけなので、ほとんどの新人は本を出せずに終わります。


売れっ子作家を育てる編集者(育成タイプ)は新人を育ててくれるのですから、とてもありがたい存在です。しかし数が少なく巡り会うことは難しい上、相性もあります。小判鮫タイプは相性関係なく本を作れますが、育てる場合は関係が密になるので相性の問題が大きくなります。


私はデビューした後で、小判鮫タイプの編集者数名から声をかけられ、プロットを出したり、打合せをしたりしましたが、いつまで立っても本は出ません。そこで気がついたのです。この人たちは、プロットや原稿をよくしようとして時間をかけているのではなく、単に他の出版社で私の本が売れ出したら出版するつもりで待っているのだ、と。問い詰めたら、「他の本が売れたら出せます」と答えた正直な編集者もいます。


しかし小判鮫タイプになる理由はよくわかります。出版不況の時代に実績のない新人の小説を出版するのは勇気がいります。失敗したら、それは編集者のマイナスになります。ならば成功する確率の高い売れている人に頼んだ方がいいわけです。売れてから依頼をしても多忙で断られるので、売れる前にプロットや原稿を預かっておけばいい。問題はこんなことをしていると、新人を育てる編集者がいなくなることです。


私はネット小説を出版したいと声を掛けられたことはないのでわかりませんが、同じ手法でネットで人気が出始めた人にとりあえず声をかけて、ブレイクしたら出版し、しなかったらバイバイという手は使えそうです。

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