第5話 菜の花に想いを

どういう訳か、ずっと前から菜の花が好きだった

派手なバラや向日葵やハイビスカスは嫌悪的だった

コスモスも悪くはないけど秋に咲く花だからどこか

寂しげで好きにはなれなかった


死生観をずっと引きずって生きてきたくせに、秋に咲く

花の物悲しさが嫌だなんて

逝き様と相反するような嗜好の矛盾性に笑われるだろう


でもそんなことはどうでもいい、とにかく唯、無性に

菜の花が好きだ


いつしか僕は菜の花咲き乱れる大群落のお花畑の中に

佇んでいた

春の心地良いそよ風が優しく頬を撫で髪をそよがせた


いっそ、このまま菜の花に抱かれて安らかに眠れたら

どんなに良いだろう~・・・などという思いが過ぎった


のどかな昼下がり、野鳥のさえずりと小川のせせらぎの

音が何故か寂しげに耳に入り込んでいた

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花はどこへ行った 小川貴央 @nmikky

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