第21話リザレクション・ウェザー⑤
グサッ!!
「う、うごッ...」
上半身の殆どの急所部分にガラス片が刺さり、短い悲鳴をあげながら剛は膝を地面につける。
「勝った...のか?」
後ろにいる瀬木や小宮などが喜び始めるが、まだ油断してはいけない。
何故なら...
ボトッ...
剛には、執念がある。
どんな事をしても勝とうとする、そんな金剛の様に硬い決意がある。
ここの電脳空間では、自殺防止の為に自分で自分につけた傷、ダメージはより本物の痛みに近い様になっている。
勿論鼓矢などの能力による自傷は大丈夫なのだが、持っていた刃物で腕を切るなどの能力が関与しない、又は関与はしているが直接的に自分にした攻撃は痛みが倍増される。
赤色のエフェクトが剛の左腕から大量にでる。
その為、この電脳空間で自傷行為をする馬鹿は一人もいない。
と、栗原たちは思っていた。
「はぁ、グッ...おれは4人兄弟の次男として生まれた、俺たちの親は『能力が全て』と謳う能力主義の奴だった...一昔前のな?」
剛は、駅のホームに膝をつけながら語り出した。
「おれと俺の兄は大丈夫だった、まぁまぁ強い能力を手に入れられたからな...だけど2人の弟と妹はダメだった、能力が無かったんだ発達障害でな、どうやら能力とかを管理する脳の機関が異様に小さかったんだ」
「そんな症状の病気は初めてで、政府も実験材料として欲しがってた...それに政府にその2人を受け渡す事も親は承諾していたんだ。だけど、俺と俺の兄はそれを阻止しようとして2人を孤児院に入れた」
「だが...まだにわかには信じ難いが、Dクラスなんだって?政府から金で雇われて孤児院のその2人を連れ去ったのは」
言っている意味がわからなかった。
はっきり考えればわかる、その事実を淡々と告げられただけなのであれば幾ら何でも情報が少なすぎる。
それを奴は完璧に信じきっているのだ。
その証拠に...
「今、見てたからわかると思うが左腕を切り落とした、そうしたらこの赤色の侵食は収まったよ...それが、お前の能力の、弱点か?」
警戒の極致、疑わしきは罰せよ、石橋を叩いて渡る、まるでその言葉を全て集めたかの様な警戒っぷりだ。
多分もうDクラスと戦っている事を忘れているのではないだろうか?
一方...
「前田くんだったよね?音を出せるっていうのは」
三浦先輩が前田に話しかけ、次の攻撃を手伝って欲しいと頼み始める、
「音...ですか、良いですけど僕の能力は確率で発動する時としない時があるんですよねぇ〜だから、肝心な時に使えない事もあるかも...」
「取り敢えずやってみて?」
そう三浦先輩が後押しすると、前田は渋々という形で能力を発動させる。
タンッ!
タイルの音が響く
タンッ!
またタイルの音が響く
「うーん...無理かなぁ?発動しやすい日とし難い日がある気がするなぁ、因みに音を立てて何に使うんです?囮です?陽動です?」
そう聞くと、三浦先輩は首を横に振って人差し指を立てながら言う
「うんにゃ、僕の能力に使うのさ」
「...分かりました、次で必ず成功させますから準備していてください?」
覚悟を決め、息をふぅーっと吐き心を落ち着かせる。
ガタン...電車の車輪が線路と線路の境目の上を通った時の音が響き始める。
ガタン、
ガタン、
ガタン、
暗いトンネルの奥の方から光が差し込んでくると同時に前田は動いた。
ガッ!!
ホームの縁を蹴り飛ばして跳ねる
「うりゃぁぁぁ!!」
勿論そのまま空中で線路のど真ん中に行って、
迫り来る電車に両足で蹴りを入れた。
と、同時に爆音がなった...前田の耳にだけ。
今までの比にならないぐらいの音だった。
電車は一様走り続けたが、音の衝撃は凄まじく一瞬で先頭車両とその二台後ろまでの窓ガラスは全て割れていた。
そして、一瞬だけ前田は見えた。
音を出した電車の方に左手をかざしている先輩の姿が、
「音量基準オーケー!全衝撃吸収完了!目標確認ッ!」
こんな音がなってもホームで戦っている剛たちは気づかない。
何故なら...
「僕が音を吸収して固形化させたからだ...」
クズ能力者達は意地でも勝利したい 挽肉ちゃん @minntityann
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。クズ能力者達は意地でも勝利したいの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます