第2話 後編
一年前までいたデゥラハンはもういない。
僕の冒険は、終わってしまった。
まもなく、僕は3人でくらしていくことになる。
僕は、デゥラハンがいたあの頃を懐かしむ。
―――――――――――――――――――――――――――――――
僕とデゥラハンの彼女は、ダンジョンに向かうために、作戦を練った。
彼女の頭部がどうにかしないと、街中にあるダンジョンに行くことができないからだ。
始めに、彼女にフルプレートをあてがったが、重くて、歩くことができなかった。彼女は、村人でL1で、圧倒的に力が足りなかった。
ブーツ、下鎧、ガントレット、上鎧と、外していき、頭だけになった時、何とか歩くことができた。
頭は、フルヘェイスでいいが、他の装備も決めないといけない。
武器は、移動の少ない弓とした。
それにあわせて、弓技術の向上をもった魔法の皮手袋を、両手の指輪には、腕力と器用さを増強でブーストさせた。それ以上の装備は難しく、服装は、いつものメイド服となった。
僕は、大盾と長剣、ミスリルのフルプレートにした。
この二人のパーティであれば、過去の僕と、気付かれることはなかった。
ダンジョンを1階層毎にゆっくり攻略していった。彼女の頭が、どこにあるか不明のため、隅々まで探るしかないのだ。経験も足りないのだから、モンスターを見つけては全て狩っていった。初めての弓で、誰からも習っていないのだから、
最初は苦労すると思っていたが案の定だった。モンスターに当てるより、僕に当てている数のほうが多かったのだ。
それでも、一週間を過ぎるころには、半分くらいの矢をモンスターに当てることが、できるようになった。
二週間を過ぎるころには、矢が僕に当たること減っていった。
一か月を過ぎるころには、主戦場は40階層になり敵も強敵に変わったが、彼女一人でも射殺すことができるようになった。
全て順調に成長したことで、失敗が隠れていることに気付けなかった。
彼女の方が射程が長いこともあり早く戦いにはいっては、倒していったのだ。
50階層を進むときには、彼女は数歩先に歩いて、倒しては嬉々として自慢してきた。
そして、問題の56階層となった。
この時も彼女が先行して、僕が後からゆっくりと彼女に近づいて行った。
彼女が、急にモンスターの討伐に失敗した。矢をはずしたのだ。
はずしたのは、この二週間で一度も無く、彼女の身に何がおきたのか、彼女の方に急いだ。僕が近づいていくと、来ないでと言っていたが、そうもいってはいられなかった。彼女に近づいてきたモンスターを一刀のもと倒し、彼女をみると、足首まで埋まって身動きが出来なくなっていた。
彼女に近づき、長剣を彼女に差し出した。
彼女が刀身をつかむのを確認すると、力をこめて沼地から引きずりだし、
入り口に向かって投げ飛ばした。
僕の方は、投げ飛ばした反動で、彼女がいた方向に倒れ込んでしまった。
その場に立ち上がると、彼女と同じように脛まで、沼地にはまってしまった。
彼女の力では、ぼくを持ち上げることはできなかった。
僕を引きずれるようなものを探してくれるよう頼むと、彼女は走りだした。
再び彼女をみたのは、四時間後だった。
その頃には、僕は、腰までつかっている状態だった。
帰ってきた彼女をみて、僕は驚愕した。
体中に剣撃で裂傷がみえ、メイド服は、魔法の攻撃からか火傷で、破れていた。
みてるこちらが、いたそうだった。
急いで探しまわったことによって、フルフェイスが外れたんだろ、今は身に着けていなかった。そのせいで、冒険者に攻撃されたのだ。
彼女の声は弱弱しく何をいってるのか判らなかった。手には蔓を持っており、僕の方に投げつけてくれたが、引っ張っても、ピクリとも動かなかった。
僕は、覚悟をきめると蔓を手放した。
彼女は、諦めないでと語っているが、
僕は、諦める気持ちは微塵も持っていなかった。
フルフェイスを脱ぐと、魔法のバックを中にいれて、彼女の方にぶん投げた。
ガントレットをはずし、正面に置き、上鎧を脱ぐと、さらにその上に置いた。
上鎧の上には盾をおき、手を置きやすようにすると、下鎧の留め具とブーツを脱ぎ、下鎧を足場にして、もう片方の足を引き抜いた。
片手では、つるを持ち直し、バランスを合わせ、片手を盾に置くことで、前に行くことに集中した。
彼女が蔓を強く引っ張ることで、両足を沼から抜け出すことができた。
あとは、沼地に沈む前に、彼女の下に飛びつくことで、窮地を逸することができた。
彼女は泣きながら僕を抱きついてきた。バックからポーションを取り出し、彼女に振ると、彼女の傷は治っていったが、彼女はまだ気づいていない。
しばらくすると、彼女も落ち着きを取り戻し、彼女と共にいったん、洋館にかえることにした。2人ともどろだらけだったからだ。
彼女の頭に僕のフルフェイスを乗せると、彼女は、少し照れたような仕草を見せた。
僕は、予備の剣と盾を取り出し、ダンジョンの入り口に戻った。
僕は、彼女の手をとり、洋館に向けて走り出した。
途中で馬車を見つけると、呼び寄せ、洋館まで送ってもらった。
すぐに、彼女と泥を落とすため、一緒にお風呂に入ってからは、彼女は特別な存在となった。
一週間後、装備を一新し、改めて、ダンジョンに潜り始めた。
このころにあると、ダンジョンは、70階層に到達し、
彼女の攻撃や、僕のワンパンでは、倒せなくなってきた。
順調に階層を攻略し、80階層にいたドラゴンは復活していたが、
眠っているのか、LV上げにちょうど良かった。
ドラゴンを討伐すると、LVは、300を超えたが、
僕たちは、56階層を言葉に油断せず、突き進んでいった。
90階層のボスは、デーモンだったが、一撃のもとに葬り
もはや僕たちに苦戦する敵はいないように思えた。
くまなく倒すことを一時中断し、今日中に魔王のもとにいくことを彼女に話をした。
彼女の頭は、これまでもくまなく散策したが、いずこの場所でも、
発見することはできなかった。
そのため、僕の呪いの解呪を先にしてもらうことにしたのだ。
くまなく散策すると、一日一階層がやっとだからだ。
彼女は、二つ返事で、了承すると、早く行こうねって言ってくれた。
91、92と階層が近づくにつれ、僕の心は躍っている。
ようやく声が出せるようになると思うと、
駆け出して行ってしまいそうになった。
手に力が入りながらも、99階に危なげなく辿り着き、僕の目の前には、階段がある。 この階段を登れば、魔王がおり、僕の声は戻るのだ。
100階層にたどり着き、扉を開けると、
周りには、今まであったダンジョンではなく、青空が広がり、雲が眼下に広がっていた。
前方に2つの人影が見えた。
奥の一人は、斜め後ろに従っているように見えることから、
前にいるのが、魔王なんだと思った。
どうやら、敵対行動をとる気はないようだ、ありがたい。
こちらは願いをかなえてもらう必要がある。友好的に接しなければならなかった。
僕と彼女は魔王に近づき、挨拶を交わした。従者はできなかったが、魔王は、念話で会話が行えたのはありがたかった。
「見事だ、冒険者よ。よくぞ、わがダンジョンを攻略した。
その栄誉に従い、一人に一つどんな願いでも叶えてやろう」
「呪いだけじゃなく、どんな願いでもですか? 」
「そうだ、どんな願いでもだ」
「僕の願いは、ただ一つ。
彼女の頭を取り戻し、人間に戻すことです。
可能でしょうか? 」
「わかった。そなたの願いを叶えてやろう」
魔王は、魔法を唱えると、光が徐々に彼女の中に入っていいき、
最後まで入ると、彼女の体は光輝き始めた。
僕は、まぶしくて見ていることができず、おもわず、目を閉じた。
再び目をあけた時には、彼女は、人間の姿を取り戻した。
僕は、嬉しさのあまり涙を流した。
彼女は、意識をとりもどしたのか、僕を見ると、
抱きしめようとこちらに走り始めていた。
僕は、彼女が目の前にきたときに両手を肩にかけると、
彼女も、一粒の涙を流し、「ありがとう」と呟いた。
「そなたの願いはなんだ? 」
「私の願いは彼の呪いをとき、彼の声を取り戻すことです」
「わかった。そなたの願いを叶えてやろう」
魔王は、魔法を唱えると、僕の指輪が光はじめやがて指輪は砕け散った。
僕の最初の言葉はきまっていた。
「愛しています」
僕は、地に膝をつくと、バックから指輪を取り出し、彼女にプロポーズをした。
彼女は、指輪を受け取ると僕に口づけをした。
魔王は、僕らを祝福すると、地上に戻してくれた。
そうして、僕の冒険は終わりを迎えた。
二人のあたらしい門出は、始まりを告げた
声を出せない僕は、愛を語る資格があるのか 寿々樹ノ葵 @nanjo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます