第1話 前編

 僕は、今、洋館で紅茶を飲んでいる、

 メイド姿の彼女が、入れてくれたからだ。


 彼女とのコミニュケーションは、当然思念でだ。

 僕はしゃべれないし彼女には頭がない。

 口頭でのコミニュケーションなど、できようはずもない。


 僕は、彼女に出会った時のことを思い出しながら、紅茶を口に運んだ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 魔法剣士は、最後に、一つ、解呪できる話をしてくれた。

 それは、魔王に呪いを解いて貰うことだ。


 この大陸の魔王が、この町の塔の最上階で待ち構えているということは、

この町で冒険者をしている奴ならば、全員が知っていた。


 話を聞いて、冒険者ギルドに急いだ。

 今までと異なり話せないというデメリットは、僕が思っていた以上だった。


 筆談とジェスチャーで、いけるだろうと、たかをくくっていたのだが、即座に相手に理解させるのは、難しかった。


 この時に改めて、僕は今までやってきた最大の失敗が、理解できた。

 それは、信頼関係の構築だ。 同じパーティで長い時間を過ごすことができていたら、つたない説明で、相手の考えることを相互理解し、苦難も分かちえたはずだ。

 

 冒険が失敗に終わると、あいつは、終わったなどの噂が広がった。

 あれだけ、希望者がいたのに、誰一人も、僕をパーティを入れてくれる人間がいなくなった。

 

 足を据えて、挑む必要があると考えた僕は、拠点の必要性を考えた。家を買うだけの財力ができたあらだ。


 もう一点、大きく変わったことがる。

 80階層まで、連れて行ってもらったことにより、Lvアップだ。


 僕が寄生して喜んでいた中級冒険者でも、30階層ぐらいだ、だから、レベルも40~50ぐらいが平均的だ。僕は、勇者について行ったことで、レベル140になっていた。LVだけで言えば簡単に攻略できる、


 だが、僕は沈黙のスキルのため、魔法を唱えることができないし、

剣術のスキルもあがっていない。上昇したのは、ステータスだけだ。


 これから、自分を信じてくれる人間と、ダンジョンを攻略していく必要がある。

 必要なのは、仲間と拠点だ。


 まずは、拠点を決めなければならない、急いで、商人ギルドに行った。

 筆記と身振り手振りで、住宅を売ってくれる商人を紹介してもらえた。


 彼が紹介してくれるのは、町の中心で、ダンジョンに近いところや、

商店街が近いところ、繁華街が近いところなど、どれも、魅力的だ。

 だが、その全てに大きな問題があった。

いない時のための管理者が必要で、この世界では大抵奴隷だった。


 奴隷契約を結ぶには、最後にスクロールで魔法を唱えなければならないが、僕は唱えられない。管理者が不在になってしまう。


 そこで、誰もよりつかないいわくつきの物件を探してもらった。

 その一つがここである。

 ここ100年誰も購入できない呪われた屋敷だ。

 幽霊がでるとか、お化けがでるとか、いわれており、

 誰も購入できないそうだ。

 冒険者が、幽霊やお化けで怖がるとは思えないから、

何か別の理由があることは、明白だった。


 僕は、商人と馬車でつれだって、町から少し離れたその洋館を訪れた。

 何度かいったことのある商人は、

 表までいったが、行きたくないといって駄々をこねた。

 商人にかわり、恐れしらずの御者が代わりに、付いて来てくれることになった。


 庭は木々でうっそうとしており、何ものも入れさせようとしていないかのようだ。

 洋館までつづく石畳が、きれいに隅々まで、掃除が行き届いているのが、

より怖さを醸し出している。


 旅館は、三階建ての洋館で、全体に蔓が蔓延している。

 手前の噴水は、苔がこびりつき、奥までみることはできず、中には魚以外のものが

今にも出てきそうだ。


 意を決して、扉を叩く。当然誰も返事があるはずもないが、

いらっしゃいといった声が聞こえてきたように感じた。


 何か聞こえた気がする、御者は、口にだして、おびえ始めてた。

 僕は、彼よりも前に入ることをきめ、扉を開けた。


 中には、ホールとなっており、正面には2階へ続く大きな階段があった。


 シンと静まった暗い屋敷内には、踏み出す勇気も持てないが

前に進まなければ、何もはじまらない。

 勇気を奮いだし、彼と一緒に一歩屋敷の中に入ると、

後ろで、ドンという音が聞こえた。


 急いで振り返ると、玄関のドアが閉まった音だった。


 出れなくなったのかとあわててドアに駆け寄ると、

ドアは、閉じただけで、また開くことができた。

 僕と御者は顔を合わせ、安堵をおろすした。


 僕と御者は正面を向き、階段の方に向かって一歩歩くと、

ほんの少し先に、黒い塊が、ボトリ、落ちてきた。


 それは、暗くて黒く見えただけで、日の光に照らされた時、

赤く血にまみれた生首がみえたのだった。


 恐怖のあまり、御者が絶叫すると、その場から消えてしまった。

 すると、家の外では、御者が絶叫が、聞こえてきた。

 僕は、あわてて、ドアに戻り、扉を開けると、

御者が洋館の入り口に全力疾走している姿だった。

 どうやら、驚いて絶叫すると、玄関に戻るようだ。


 コツコツコツと階段から、

人があるく音が聞こえてくる。


 背中は恐怖で丸くなり、冷たい汗が流れるのを感じた。

 振り向いた先の階段には、どす黒いワンピースをきた女性が

こちらに向かって歩いている。

僕は、心の中で御者以上の悲鳴を上げた、


 彼女が歩いているから悲鳴を上げたんじゃない、

彼女の首から上が、なかったからだ。

驚く僕をしり目に彼女の声が僕の脳に響いた。

「いらっしゃいませ。

おまちしておりました」


 彼女の声が、脳内に響いた時には、

既に限界だった僕は、恐怖のあまり気を失った。


 目をあけると、窓からは日の明かりが指しこんでいた。

 僕はベッドで眠らされていたようだ、

隣には、メイド姿の首のない彼女が語り掛けてきた。


「どうですか、ご機嫌は?」


 落ちついて聞くと、声は驚かそうというより、心配しているようだった。


 しばらく彼女と会話を行った。会話といっても脳内でだ。

 念話といった形で会話をすることができた。

 どうやら、話をしたいと思うことで、彼女が僕の心の声を拾ってくれて、

彼女が僕に会話をしてくれることで、話を聴くことができるようだ。

 話していると、久しぶりの会話で、心が躍った。


 彼女の話を整理すると、以前にいた、ここのご主人であった魔法使いがいたずら好きで、来る人を驚かせて楽しんでいたんだそうだ。

 館には、驚いて声をだすと入り口に戻る魔法が、かけられているそうで、

大抵の人は、屋敷の仕掛け首のドロップで、入り口に戻ったそうだ。

 それでも、声をださずに、中にはいってきた猛者もいたそうだが、

彼女をみると絶叫し、入り口に戻らされたようだ。


 驚かずにいたのは、僕が初めてとのことだった。

 彼女からしてみると、普通に挨拶をしただけで、

驚かそうとしているわけではなかったので、

絶叫されることに、心を痛めていたようだ。


 屋敷がうっそうと生い茂るのは、

どうにもすることができず、彼女ができたのは、石畳の掃除ぐらいしか、

行えなかったっておちだった。


 僕は、ここが気に入った、なぜなら僕が唯一会話できる彼女がいるからだ。

 彼女に、ここを買い取る話をすると

嬉々として承諾してくれた。

 僕は、急いで商人の所に戻ると、彼はしこたま驚いて腰をぬかし、

屋敷を買い取ることを、記述すると、さらに驚いてしばらく筆談ができなかった。

 何度も、止められたが、僕の心は決まっているため、

申請は直ぐにおりて、洋館は僕のものになった。


 彼女ができなかった庭の剪定や、池の掃除など、

体を使うものを一通り僕が行った。、一週間をすぎるころには、

洋館の外見は、見違えるように、綺麗になった。


 そもそも、中は、彼女が掃除してくれており、

隅々まで、綺麗だった。

もはや普通の洋館に生まれ変わった。


 彼女は、これまで一人で暮らしてきた反動かとてもおしゃべりだ。

 その中で、一つ気になることがあった。

 彼女は、デゥラハンになる前の記憶がなく、塔の中に自分の頭があるということだ。


 僕は、魔王から呪いをといてもらうため、塔に行きたい。

 この二つの目的が重なったのだ。


次の日から、僕と彼女は、ダンジョンに

チャレンジすることになった。

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