第5話
「それでどうやって二人は出会ったの?」
ご飯も進み、会話も進んだ。母親はまるで恋に憧れる高校生のようなキラキラとした目で泉と話している。俺は父親と酒を飲みあっている。すでに酔いつぶれているにもかかわらず二本目に手を出す父親。俺も強いわけではないのでちまちまと缶に口をつける。昼間っからビールはあまり飲まないから喉に来るシワシワがいつもより強く感じる。
「それでお前らはどこまでいったんだ?」
酔った人の怖いところ、思ったことがすぐに口に出るが発動した。この話はどうする?付き合っていた頃はそれなりにやっていた。ま、月二ぐらいで。でも今はそんなことを口にしていいのか迷う。
「どうした?・・・まさか!?」
「い、いやいやいや・・・」
そうかと何をどこまでとは口にせずに父親はなにかを理解してくれたようだった。この話はもちろん泉にも聞こえていて冷たい視線を横から感じる。あははと笑って誤魔化しているとピンポンとインターホンが鳴り母親が来たかな?と言って玄関に行った。
少しして母親が返って来た。その後ろには珍しい顔ぶれがあった。母方の両親、つまり俺の爺さん婆さんが顔を出した。
「ゆうちゃん久し振り」
婆さんはいつものようにシワだらけの顔をくしゃくしゃにして笑顔を見せる。やっぱり孫は可愛いのだろう。
「おっすばあちゃん、半年ぶり」
「もうそんなに経つのか」
爺さんは俺の頭をくしゃくしゃと搔きむしりながら言った。二人は俺の隣に並んで腰を下ろす。母親が箸を渡そうとすると婆さんが手のヒラを突き出していらないと合図する。二人はもう食べて来たのだろう。
「裕太、べっぴんさんだね〜」
それが誰を指しているのかすぐにわかる。泉もそんなことないですよ、とすぐに言葉を返す。泉のコミニケーション能力には至極感心した。あったばかりの人にここまで硬くならず、冷静に返答できるのは難しい。俺はまずできないと思う。
爺さんも本当にそうだと言っている。俺には勿体無いとまで、そこは余計だと思うぞ。
「そういえばなんで二人がわざわざ・・・」
この質問には母親が答えた。
「裕太が彼女を連れて来るって話したら見たいって言うから」
「・・・そう、なんだ」
今日、もし彼女を連れて来なかったら両親はおろか爺さん達の期待も背いていたのだろうと思うと良かったと思う一方で頭が上がらない。彼女ではあるが泉はレンタル、偽りの存在なのだ。嘘をついていることが自分の胸をジクジクと刺す。その覚悟はしてきたはずなのにな。
「そういえば今日は縁日だったね。二人とも夜は祭りに行っておいで」
母親の提案に俺と泉以外はいいねと口々に言う。家から少し離れたところにある神社が縁結びの神様を祀っているらしく、毎年この時期にお祭りをしている。小さい頃はよく友達と行ったな・・・。昔を懐かしんでいると泉が俺の顔を見て笑顔で口を開いた。
「楽しそう、行こうよ」
この言葉が本心からのものか、彼女としての仕事の流れからのものかわからない。でも行く方が今の行け行けムードにあった答えだろう。
「なら行くか」
「うん」
それから夕方まで大広間でご飯をちょくちょくつまみながら話し続けた。
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