涼 (2020.8.5 いつかの下書きを投稿)

都会の酷暑、人工物、どこへ行っても情報過多な街、人口密度の高さ、効きすぎている冷房、疲れやつれた室内、そういった喧騒が、ここには無い


ここは避暑地であり、今は、星と窓からの漏れ灯に微弱な光を見つけながら、少しばかり薄いシルクに身をくるみたくなる、それでも冬季とは異なる柔和で穏やかな夜気に身を晒して、虫の声音、暗夜の中で葉と葉が触れ囁き合うような音、細身の幹のしなやかな曲線をなぞる音、隣家からの風鈴の夏色の響きといった、自然の無数の重なり合いは薄明の


息を吸い、吐き、呼吸のたびに今が濃く満ちていく

それでも、私は欠けたような心持ちで、ここにはいない人のことを思い出していた


思い出して痛みが走らない関係性で、幸せだと感じる 約束もない

もっと気楽で在ろうか、一周回って結局進むなら変わらないだろう、それでもどの関係性においても私は距離感に臆病で、伝えたいことを自然と放てない

気持ちを言葉に乗せることも、行動に託すことも、深く考え過ぎてしまうからかもしれない

"言いたいときに伝えているだけなんだけどね、まあでもバランスとタイミングは大切だよね"とある人は言った

私の脳は、相手に嫌われる可能性ばかりを考えていたけれど、必要なのは、そういう適度な塩梅を推し量ること、タイミングを読むことなのでは?

試してみる?と書いていたら良い時間 軽やかに行こう 風通しの良い自然な流れに身をまかせるだけでいい 多分




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徒然なるままに 沈殿する鯛 @agas

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