この聖夜の夜に幸せなひとときを!
灼凪
少女は白い白衣を纏いウサギを駆りて聖夜の街を行く
誕生日が終わった束の間。3週間後にやってくるイベントーーーそう、それはクリスマスである。雪が降りしきるアクセルの街、ぽつんと佇む屋敷の部屋の中で私は悩んでいた。
カズマには何をあげたらいいのか。
今日は12月18日。クリスマスまで後1週間しかない。
カズマが喜ぶものってなんだろう?直接聞いてみるのもいいが、なんだかそれはそれでハードルが高くて気が引ける。
今日も爆裂魔散歩に行ってきた後、ベッドにうずくまってさっきからずっとこの調子だ。
私は悶々と考えた。
めぐみんの場合。
12月24日。
この日は朝からみんなはパーティーの準備で大忙しだ。何せアクアとカズマがリアルツリーを用意するっていうから、森にもみの木を探しに行った。
私は屋敷の飾り付けを任されている。
ダクネスが掃除を終えると、
「めぐみん。最近はお菓子作りに凝っていると聞いた。なら一緒にケーキでも作るか?」
と言ってきた。
「良いでしょう!あ、言っておきますけど私が作ったことがあるお菓子はクッキーかホットケーキの小さいやつぐらいで、ケーキは作ったことないですよ?」
ダクネスも作り方が分からないと言うと、私は早速レシピ本を買ってきてあーだこーだ言っていた。
「ダクネス!大変です!バターが足りません!!」
「バターは作れるらしいぞ。こうやって瓶に入れた生クリームを振って!ふん!ふん!」
何時間かかるんだろうか。ダクネスは生クリームを振り続けていた。
日も暮れた頃。
アクアとカズマも帰ってきた。と、その先にゆんゆんも!?
「めぐみん!メリークリスマス!」
「!?なんでゆんゆんがいるんでしょうか?」
「えー別に良いじゃない!カズマさんに誘われたから来たのよ!」
カズマに誘われたのなら仕方ない、と思うしかない。
「そこで提案なんだけど、プレゼント交換をしようと思うの!くじ引きで引いたプレゼントをみんなで貰うってのはどうかしら!?」
「なぁアクア。いい提案なんだけど、5人だと1人自分のが被るっていう確率もありえるよな?」
「それも含めて楽しめばいいじゃない!まぁまぁ、今日の運勢も占ってるみたいだと思うと見逃せないわね!」
プレゼント交換をしようと考えを言い出したのはゆんゆんらしい。実は私も今までプレゼント交換をしたことがないのでどっきどきのわっくわくだった。アクアも純粋に楽しみたいようだ。
アクアの手作りした箱にそれぞれ自分のプレゼント箱の色と名前の書いた紙を入れるとシャッフルする。
「かじゅまさん!早く早くっ!」
既に酔ったアクアは催促する。
「俺が合図するんかよ!…せーの!」
カズマの合図と共に、一斉にくじが引かれる。同時にプレゼント箱を手に持った。
「…あら、可愛らしいアクセサリーね。ダクネスかしらね?」
するとダクネスが手をあげる。ダクネスも高純度のマナタイトのペンダントを手にしていた。
「これを選んだのはアクアか?」
「ええそうよ。鉱山の地下深くから採ってきたターコイズブルーっぽいマナタイトをー、ペンダントにしたくてー頼んで作ってもらったのよー」
「流石にここまでの贈り物は。嬉しいが相手を本気にしてしまうぞこれは」
変なところで本気だな、とダクネスは項垂れていた。 一方ゆんゆんは、
「…懐中時計かぁ。これ自分で選んだやつなんだけどなぁ」
不幸せなことに、自分のを選んでしまっていた。
「って!?私より気まずそうな2人がいるんだけど!?」
そう、私とカズマは、お互いのプレゼントを手にしていた。カズマは運が良かったのかもしれない。
「なんだか、両方とも薄い包み紙ですね////」
「俺の幸運が功を奏したぜ!マジで嬉しい!」
ダクネスとアクアはどんちゃんした後酔い潰れて寝てしまっていた。 ゆんゆんは空気を読んで家に帰っていった。
その日の夜。
私はチケット入れのような紙を開いてみると、
「1日なんでもしてあげる券」
が入っていた。
まさか、悩みに悩んだ結果、カズマと同じものになってしまったと思うと、頭を抱えた。カズマも同じことをしている頃だろう。
違う。そうじゃない。カズマも今日1日なんでもしてあげる券を貰っているから私が嬉しいことや喜ぶことを思案しているに違いない。
私はカズマの部屋へと向かう。
「かずまー失礼しますよー!」
ドンドンドンと勢いよくドアを叩いて入った。
「うおいきなし入ってくんな!てかめぐみん!この1日中なんでもしてあげるって、どんな案でもいいのか?」
券が券と券で被ってしまったようだ。
「考えが被ってしまうのは妙に恥ずかしいのですが!はい、基本的にOKですよ。1日中カズマを独占できますね」
「おう、分かった」
私はふふっと含み笑いをするとカズマは照れたような顔で返事をした。
「ーということで!私は甘えん坊計画を実行したいと思います!」
「って、なんでまた突拍子もないこと言い出したんだよ」
「以前、カズマは甘やかしてくれる包容力のある優しい女性が好きだと言ってましたよね(9巻参照)?えーと、そこで、いまいちイメージが湧かないのでカズマの想像している年上のお姉さん?系ってどんな感じか教えていただけますか?」
私は指をもにょもにょしながら言う。
「えーと、うーん、そうだなぁ。優しいし、年上の気質あるし、学校の先生とか?禁断の恋みたいな設定でお願いします」
後者の禁断の恋の設定はいらない気もするが。担任の先生でいいのかな。
「では、カズマは年上の担任の先生に恋してしまった生徒という雰囲気でお願いしますね。今は日付けが変わってしまったから、明日の日付が変わる頃までですね」
「本当に1日中なりきれるのか?てかなんというベタな設定…。果たしてお前にできるのか見物だな」
「はい。たまには甘えてくれていいんですよ?」
私はからかいには惑わされず返した。ベターな設定なのか。24時間カズマを預かってやろう。
カズマが早速一緒に寝てください、と言い出したのでまた同じベッドに入る。
「おやすみー」
「あ、もう少し布団をかけないと風邪引きますよ?」
そう言って肩につかるまでかけてやる。
「悪い。寒くて寝られないからもうちょっと近づいていいか?」
カズマは節操なしに言うと、私の胸に顔をうずめてきた。
「ひゃ!し、しょうがない子ですね。…他の先生や生徒に見つかったら何言われても知らないですよ?私もとんでもないことを言われるかもしれません。眠くなるまで羊を数えてあげましょう」
101匹目の羊を数え終わった後私もようやく眠った。
「おはようございます!カズマ、もう朝食は出来てると思うので、冷めないうちに来てくださいね?」
先に起きて着替えた私を後から起きたカズマがみつめてくる。
「お前、なんで白衣なんだよ」
いつもと違う服装にカズマはびっくりしていた。セーターの上に白衣を着ていたからだ。
「先っ生にお前呼ばわりはないでしょう!先生といえば白衣ですからね、当然といえば当然だと思いまして!」
着てみました!と言わんばかりに白衣を翻す。先生のかっこよさが伝わったのか、カズマはもそもそとベッドから降りて着替えの準備を始める。
「ふ、ふーん。白衣もなかなか悪くないな。似合ってんぜ!なんか一気に目が覚めたわ」
あの後普通にいつも通りに爆裂魔法を撃ちに行ったり、帰宅したらカズマの商品作りをソファーの上に身を預けてボーッと眺めたりしていた。爆裂魔法を撃った後カズマが私の足を触ってセクハラしてきたことはいただけなかった。
アクアとダクネスは、また今夜もパーティーするというわけで朝から出かけて行っていない。
「ただまー!!」
「今帰ったぞー。あれ?なんでめぐみんは白衣なんだ?」
二人はお昼頃に帰ってきた。魔力が回復した私はたたたたと2人の元へ行ってかくかくしかじかと説明した。
「なるほど。理解した」
恥じらう私をみながらダクネスはうんうんとある胸を込み上げていた。
「それがめぐみんのプレゼントというわけねー。随分可愛い先生だと思うわよ!」
アクアは案の定、思いっきりからかわれた!
「かずまー、なんとか言ってくださいよー?」
私は目にアメリカンクラッカーの涙を浮かべてフォローをするように訴える。
「んー、めぐみんは年上の先生の威厳っていうやつがなくても、充分威厳があると思うんだよな」
「それは、どういう…?」
「怒るとめっちゃ怖いから」
私は絨毯の上に転がっていたカズマの商品製作に必要であろうネジを拾って窓から庭に捨てようと歩く。
「ちょ!それは大事なものだから捨てるなって!」
カズマはてくてく歩いていた私の後ろを追って、引きずっていた白衣の裾を足で踏んだ。途端、私が前方にべしゃっと倒れた。
「めぐみんはどちらかというとお母さんよね」
アクアにヒールをかけてもらいながら、2人に慰められていた。
パーティーはお昼頃から始めたので、夕方には終わっていた。
片付けが全て終わった後、私は部屋でゆっくりしていた。正直先生になりきるのは精神的にも身体的にも疲れる。もうやめてしまおうかな、と思った時だった。
「めぐみん先生ー、いますかー?」
「いますよー。入ってきていいですよー。先生に何か用事ですか?」
ガチャリ、とドアを開けてカズマが入ってきた。
多分もう、片付けをしてた時に私の白衣の下のタイツをチラチラとみていたので、大体察しがついていた。
「せ、先生のタイツが気になってしまって…」
カズマは顔を赤くして言う。気になってしまったのか。
「全く、しょうがない生徒さんですね。はい」
私は床にマットを敷いて正座になる。ぽんぽんと自分の膝を叩いてやった。
するとカズマは私のふとももに仰向けで横になる。私は顔が赤い瞳と同じように真っ赤になっていた。もちろん目も赤く輝かせている。
「先生の癖に何恥ずかしがってんだよ。めぐみんせんせーの太もも、あったかいなりぃ〜」
急にうつ伏せになり太ももをすりすりしてきた!この生徒はイケナイ子だ!変態だ!
「ふわぁ!?いきなりすりすりしないでください…!前にも言ってましたが、カズマの国では本当にこういう膝枕もあったというのですか!?ていうか流行ってたんですか!?」
「いや、流行ってはいなかったよ。ただこういう作法があるというだけだ。はぁ…後もう1時間だけこうしていたい。このままだとめぐみんの股間をずっとみてられ…」
ポカっとカズマの頭を叩いた。そうして足を少しずつずらそうとする。
「もうちょっと頭を下げてもらいましょうか。太ももでアイアンクローしてあげますよ?」
「すいませんでした!謝ったからもう少しだけこのままでいさせてください…」
「…では、先生の言うことを聞いてください。仰向けに戻して寝てください!」
先生の言うことは絶対だと思ったのかこの後は仰向けで寝てくれた。
カズマの髪を触りながらうとうとしてたら、約3時間が経過していた。外は夜だった。雪が降ったので辺りはすっかり寒い。
「カズマー!起きてください!このままだとお風呂も入れないですよー!」
顔を覗き込んでペチペチとカズマの頬を叩く。
「んぬぉあ!?昼にめっちゃお腹いっぱいになったからこのまま寝てたけど、って、え?やだ先生顔近い!!」
覗き込んでいた顔をあげてハッとする。もう少しでキスする寸前だった。というか未遂?
「いけませんね。もう少しで先生が生徒にキスしちゃうところでしたね////」
目を爛々と赤く輝かせて言う。ムクッとカズマは起きると、
「いっそこのまま一緒に風呂入るか?(面倒だし)」
とトンデモナイことを言ってきた。雰囲気ぶち壊したし、先生と生徒が入っちゃマズいだろう。
「////もうもう!さっきの雰囲気を返してください!入りませんからね!!私がいいと言うとでも思いましたか!?おおまち…あっ!」
立ち上がろうとして足を崩した瞬間、ビリビリとした電流が太ももから足の先まで伝っていた。脚が痺れたようだ。
「あ、あの、脚が痺れて動けないです。どうしたらいいでしょう?あうぅ」
なんとか女の子座りになった私の脚をカズマはみている。すると足裏をつんってして、
「おりゃ!」
「ひゃうう!!」
と変な声をあげさせた。この男、楽しんでやがるな。
「へ、変な声が出てしまったじゃないですか!あん…!んひゃっ!やめ、やめひぇ!」
「脚が痺れて動けなくなったって…お前の下半身は無防備極まりないなぐはははは!」
カズマのなんでも言うことを聞いてやる時に仕返ししてやろうと思った。バニルみたいな笑い声はやめてほしい。
この後めちゃくちゃ脹脛とか太ももをスリスリされた。
カズマの場合。
12月26日。
2日連続のパーティーが終わり、嵐が去った静けさの後。
アクアは2日酔いになってしまって寝込んでいた。ダクネスはお歳暮を実家に置いてくると言って行ってしまった。
珍しく昼頃に起きてきためぐみんと2人きりで、朝食をとっていた。
「まだ、カズマの何でもしてあげる券のお願いを聞いてませんでしたね」
朝食を食べ終わっためぐみんは、券で口元を隠して言う。肌身離さず持っていたのか。そう考えるとちょう照れ臭い!
「そうだな。なら、今日中に実行してしまおうじゃないか!」
目の前にいる彼女の真似をしながら言った。めぐみんはムッとした後カタカタと肩を震わせながら立ち上がり食器を台所の方へ持っていった。
「そういえば、あのーあれ、クリスマスケーキはめぐみんとダクネスが作ったんだって?美味かったよ。めぐみんのことだから爆弾でも仕掛けてあるんじゃないかと思ってたけど!」
俺も自分の食器を持って台所へ行きめぐみんに言った。
「〜〜〜!爆弾なんか食べ物に仕掛けるわけないでしょう!誉めてるんですか貶してるんですかどっちなんですか!!寧ろダイナマイトを仕掛けそうなのはカズマですからね!」
「いーや!めぐみんお前もだネ!」
「ちっが、い、まっす、よ!とち狂った頭をしているのはあなただと言っているんです!私はこのパーティー随一の常識人ですよ!?」
そんな考えが思いつくのは俺くらいだと言うように喧騒していた。俺たちは台所で食器を洗いながら喧嘩していた。
「私はこのままでも構わないのですが…どうしてカズマの部屋じゃないとダメなんでしょう?」
なんでもしてあげると言われた矢先、俺が思いついたのは俺の商品製作の開発にめぐみんが付き合うことだった。部屋をマナタイトで温めておくから10分くらい待っててくれとめぐみんに言うと、めぐみんは暖炉の前で立たされていた。
10分経つと、ドタドタとめぐみんが俺の部屋に向かってくる音が聞こえてくる。
「カズマ、10分待ったので入りますよー!」
「おう!どうぞー!」
めぐみんが扉を開けて入ってきた俺の部屋に広がっていた光景は、ベッドの上に女性用の下着が置いていた。
「カズマ?なんですかこれ…?」
「最近、商品開発でスランプ状態だったんだが、俺はふとこういうものも作ろうと思い浮かんだ。で、新しい女性用の下着作りにも手を出してみたくなってな。風呂敷で出来てるんだ…異世界っぽいだろ?」
実は俺、商品の開発もマンネリ化してきたところだったんだ。ほんの、ちょっとした出来心(いや下心?)で新しい女性用の下着の製作にも精を出してみたくなったのだ。
「はぁ?」
「見ての通り女性用の下着さ。まだ試作段階だけど、こここれをめぐみんに着てみてほしい!」
「それはみれば分かりますけど!私に女性用の下着を試着しろと…!?一応、サイズとかは大丈夫なんですかね…?」
「おう!大丈夫だ、問題ない!だから大船に乗ったつもりで、着てみてくれよ!ていうか着てみてください!(メイド服やらを測った時のサイズ表が出てきて良かったぜ)」
「うっ、分かりましたよ。…じゃあ、後ろ向いててください」
半分懇願するような感じで俺が差し出した下着をめぐみんは受け取ると、恥ずかしそうに言った。
「あぁ。アレ?俺って部屋から出ていかなくていいのか?」
「ど、どうせずっとそっぽを向いてるんでしょう!カズマって戦ってる時は凄い度胸をみせるのに、いざこういう雰囲気になった時は抜かりのないヘタレですからね」
するすると、服を脱ぐ音がする。と同時に下着を付ける音も聴こえた気がした。
「今のこの状況がこういう雰囲気っていうのが理解に苦しむんだよ!」
「ふー、もういいですよ。ど、どう…ですか?」
何故かベッドに正座になり明後日の方向を向いていた俺はくるっとめぐみんの前方に向き直るー!?
お、おおー、これぞまさに色欲の
とある人は言いました。“色気は生への執着”だと。
実はローブは肩出しなのでローブの下に何か紐がつかないブラジャーがないかと試行錯誤した結果腕と頭から通すことを思いついた、とは本人には言えない。言えるもんか。上下お揃いの色の風呂敷ブラとパンツだ、めぐみんはちゃんと着こなしていた。
「あ、の…そんなに見つめられると恥ずかしいのですが…////」
「似合ってるぜ!天使みたいで最高だ!」
冬なのにめぐみんの顔がヒートアップした。
「風呂敷の色も心なしか私の好きな色のような?そういえば、この風呂敷ってどこから仕入れたのですか?」
「紅魔の里の服屋のおっちゃんからだぜ。どうだ?何か気になることとか不具合があったら教えてくれ。とりあえず動いてみてくれないか?」
「そうですね。はっ」
めぐみんはそう答えてぴょんぴょんと飛び跳ねてみせた。すると、め、めぐみんのマシュマロな部分が僅かに揺れる。マシュマロの地は震度1くらい。
止まった途端、めぐみんは訝しげな表情で俺を見ると、ブラの膨らみ部分に手を当ててきた。やべ、感づかれたか!?
「少し布が薄い気がしますね。これでは透けてしまいます。風呂敷はもっとぶ厚いでしょうから、改良の余地がありますね」
今度はめぐみんは自分の胸を見ながらさすっている。そんな仕草も心許ないぞ。あれか、揉んで欲しいのか。
「それと、頭から腕にブラを通す時ちょっときつかったぐらいですかね。ゴムが入っているのは良いんですが」
「そっかーなるほど。感想ありがとうな」
商品の下着論評会も終わろうとしている時、めぐみんがぶるっと身体を震わせた。
そして脱ぎ捨てたマントを羽織りベッドの上で足をぷらぷらさせていた俺の側にきて、めぐみんは真正面から屈んで頭を抱き寄せてきた!流石に寒いのは分かるがこここれはいけないだろう!
「本当は、こう言うのも照れくさいのですが私の普段着のためにあんな下着を作ってくれてたんですよね?嬉しいです、ありがとう、ございます」
えい、と言って普段は目立たないめぐみんの柔らかいマシュマロがうずくまる状態になった俺の顔にふにゃっと当てられる。頬に!めぐみんのマシュマロが!凄くマシュマロしてる!それはどこか頼りなく、それでもって、ふわふわの触ると崩れ落ちそうな玉子焼きみたいなイメージだった。
「な、なぁめぐみん。これは仕返しってやつなのか!?」
「えぇ、そうですよ!お返しという名の仕返しです!はぁ…紳士的な気遣いはできるのに、いざ事に及ぶとなると怖気づく癖に」
そう、うずくまる俺の頭の上で囁いた。外は雪だというのに彼女の体温は熱くなっていた。理性がポップコーンのように弾けそうだと思った途端、
「んだとォ!?いつも邪魔が入るからできないだけだよ!!めぐみんとHなことしたくてもできないんだよ!!」
俺は胸の中から顔だけ出すと言った。
めぐみんは女の子特有のいい匂いがするけど、俺の匂いは、どう捉えているのだろうか。
めぐみんはちょっと何言ってるか分からない、という様な困った表情を向け、
「ー?この間、恋人になるまではえっちなことは禁止と言いましたよね?今は仲間以上恋人未満、それ以上でもそれ以下でもないですよ?」
と人差し指を口の前において言ってきた。
「この小悪魔!昔読んだ絵本に出てきたヤギにそっくりだ!」
めぐみんは俺から離れると「あ、すいません今からこれを脱ぐのは寒いのでお風呂に入った時に試作品の下着は返しますね」と言うと恥ずかしそうにはにかみながらローブを着直し、脱いだ下着も回収してめぐみんは部屋へと戻っていった。
ちっくしょぉおおおおお!また生殺しプレイかよぉああああああ!
この後すぐにダクネスは帰ってきて、アクアも居間にきたらゼル帝の世話をしていた。
アクアは水を飲みに起きてきたらしい。めぐみんはというと、お風呂に入っているようだった。
因みに25日はクリス兼エリスの誕生日だったわけだけど、エリス教の信者の一般の家にアクシズ教徒たちがパイを投げに行くというお祭りらしい。地の文の通りお祭り騒ぎだったらしく、アクアもパイを投げに行こうとしていたところをダクネスに止められていた。
そんな話はさておき。
しかし、めぐみんも成長してたんだなぁ…。ったく、美味しいシチュエーションを期待してただけバカだった、将来本当に巨乳になったとしたらあのちっぱいはワシが育てた…という達成感が得られるのに。って何考えてんだ俺!心なしかマシュマロのように甘い香りもしてたが、未だに無邪気な子供っぽいところもある。
見事なまでにホワイトクリスマスの日だったが、雪のように真っ白な世界を愛する人とこれからも歩いていこうと思う。
めぐみん視点に戻り。
紅魔の友人と初めて降り立ったアクセルの街で、目にしたのは面白おかしい人たちだった。あの人たちをみていて、どんな冒険ができるんだろう、と想像を膨らませたっけ。
そして一緒にパーティーになってから、私は元より他の女の子にもセクハラするカズマと、どう接していいのか悩んだ時期もあった。
私はお風呂で入浴中に考えてた。
どうしてこんなに好きになってしまったんだろう。でも、1人くらいあなたのことを気にかけてくれる女の子がいてもいいじゃないか。
「甘えん坊さん計画」のTLものの私が先生でカズマが生徒ごっこをしている時の膝枕も、嫌じゃなかった。カズマの商品製作に付き合ってやろうと思い、あんな下着を着て、寒かったため密着するような形でカズマを抱きしめてしまった時は、凄く、ドキドキした。カズマにもそれが聴こえていただろうし、カズマの心臓もうさぎみたいに早かっただろう。
さっきから悪寒が酷い気がする。頭もぼーっとしてきて身体も火照り始めていた。なんだろう、ところどころ関節痛もある感じがする。
私はお風呂からあがった後夕飯を食べようとしたが、体調が悪いので先に寝ますねと言うとカズマに風呂敷の試作品下着だけを返して早い時間に就寝した。
カズマに焦がれていたら、いつの間にぼーっとしてふらふらとしてきて陶酔しきっていて、自分の手を額に当ててみたら凄く熱かった。
何だろうこれ!?恋い焦がれて熱でも出たというのか。昨日あんな格好でいたからじゃないか。でも、知恵熱ならぬ恋という名の恋熱が出てしまったのは否定できない。
次の日に熱は1度下がったものの、爆裂魔法は不発で終わるし、もう最悪だった。
「うぅ…これもカズマのせいで年末年始が台無しです…」
とベッドの中で呟いた。
メ、メリークリスマス!
この聖夜の夜に幸せなひとときを! 灼凪 @hitujiusagi
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