若葉のころ（旧）

２３

「前の奥さんの命日に私に愛の告白をするんですか？」まりもは言った。

「……すみません。いいきっかけだと思いまして」

　そう言って小道さんは、まりもの家に来る前に、奥さんの墓参りに行って、まりもに結婚の申し込みをすることをその場で伝えてきたと、まりもに言った。

　そんな話を聞いて、まあ小道さんらしいかな、とまりもは思った。

「今度私も、お墓参りに言ってもいいですか？」まりもは聞いた。

「もちろんです。双葉さんさえよければ」と小道さんは言った。

「まりもです」

　とまりもは言った。

「まりもって、名前で呼んでください」

「……まりも」

　すると意外にも、小道さんはまりもの名前をあっさりと呼んでくれた。

　それで、本当に意外なほど、まりもの機嫌はすごく良くなった。（内心、やっぱりちょっとむっとしていた）

　それから一ヶ月後、二人は結婚をした。

　そして二人は一緒に、小道さんの前の奥さんのお墓参りに行った。

　小道さんの奥さんのお墓は隣の隣の街にあった。

　そのお墓の前でまりもは「安心してください。小道さんのことは、ちゃんと私が最後まで面倒を見ます」と心の中で小道さんの前の奥さんにそう言った。

「まりもさん。お墓の前で、……その、妻になんて言っていたんですか？」と駅までの帰り道で、小道さんは言った。

　小道さんはまりもと結婚した今も、まりものことをまりも、前の奥さんのことを妻と呼んでいた。そう呼ぶことをまりもは小道さんに許していた。

「秘密です」

「秘密？」

「ええ。そうです。女同士の秘密です」と言ってまりもはにっこりと笑った。

　そのまりもの笑顔を見て、つられて小道さんもにっこりと笑った。

　それから、二人は道端で幸せなキスをした。

「ずっと大好きです！　小道さん！！」

　まるで雨上がりの夏の晴れた青空のように、にっこりと笑って、双葉まりもは秋葉小道さんに、キスのあとでそう言った。

　エピローグ

　……君（あなた）と、ずっと一緒に生きる。

　若葉のころ　終わり