深い森の香り
フカイ
掌編(読み切り)
そのとき私はいつも、
深い森の香りのなかにいる
白いもやがかかって
あまり難しいことは考えられなくなる
あたまがぼんやりして
ただ、
あなたのことばかりが
脳裏を行きかう
緑の濃い、深い森のなかでは
白い霧の向こうから、
ときどき
何か、獣のうめき声のようなものが聞こえたり、
私自身、めまいがするように
くらくらすることがあるけれど
すべてを消し去る胸の高まりが
わたしをどこか素敵な場所へ導いてゆく
つまらない日常を超えた、
どこか
本当に素敵な場所へ―――
透きとおった緑色の湖の水面は、
鏡のように森の木々を逆さ写しにするよ
わたしは夢中になって、
すべてを忘れ
その森の香りを胸いっぱいに吸い込む
あなたの香り
深い森のような、
あなたの香り…
わたしを狂わせ、
高ぶらせる、あの香り…
ほら
あの歌が聞こえる……
不思議な東洋の旋律に乗って、
ノルウェイの深い森と
そこから産み出される家具の物語
あなたにも聞こえる?
I once had a girl
(かつて女の子がいた)
Or should I say she once had me
(いや、彼女にひっかけられたと言うべきか)
She showed me her room
(彼女は部屋を見せてくれて)
Isn't it good Norwegian wood?
(ノルウェイの家具よ、いいでしょ?、と言った)
(Lennon / McCartney)
こころを込めて、
あなたにフェラチオするときはいつも、
そんな風に
森の奥にいる気がするのよ
ほんとうに
大好きなあなたに……
深い森の香り フカイ @fukai
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