第2話

 来るはずのなかった覚醒。とっくに砕けたはずの眼球が光を捉える。

 引き千切られたはずの耳が音を拾い、潰れたはずの鼻が匂いを嗅ぎとる。

 背中に柔らかい感触を感じた。ここはベッドの上だろうか。

 手を動かして顏に触れると、どうやら包帯が巻かれているらしい。ゴワゴワした感触が伝わる。

 思い切って目を開いた。どうやら目の周りには巻かれていないらしい。

 どこかの病室のようだ。なぜ病室なんかに運ばれたのだろう。

「どうして?」

 呟いた声が頭に響く。次に感じたのは違和感。

「わたしの…こえ…?」

 違う。私はこんな声じゃない。私の声はもっと。

「わたしは…わたしは…!」

 また違う声。これでもない。こんなんじゃない。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。

「あっ…ああああああ!」

 こんな声ならいっそ。

 潰れてしまえ。

「………!」

 頭に響いていた嫌な音は消え、再び病室に静寂が戻る。

 と思ったのもつかの間、足音と扉をノックする音。間もなく女性の看護師が一人といかにも医者というような風靡の男が部屋に入ってきた。

 その医者は私のベッドの横にしゃがみこみ、優しい口調で話し始めた。

「桐井舞ちゃんだね?いきなりだけど君に伝えなきゃいけないことがある。これは君の今後の人生に大きく関わってくる、とても大切なものだ」

「君は、オーヴァードに覚醒した。」

 この医者は何を言っているのだろう。

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うちの子の昔話 @kazuchiyo

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