うちの子の昔話

@kazuchiyo

第1話

 雨の日、歩道を制服を着た少女が歩いていた。

 学校の帰り道…ではない、ここは彼女の家に向かう道ではない。

 馴染みのない街並み。10年以上住んでいた町なのに、通学路を外れただけでこんなに違って見える。

 ぼんやりと、ぼんやりとそう考えながら彼女は歩いていた。

 横断歩道に差し掛かり立ち止まる。右を見ると、雨のカーテンを跳ね除け走るトラックがこちらに向かってくるのが見えた。

 雨が降っているというのにかなりのスピードだ。

 少しの葛藤、足がすくむ。

 目を瞑り。

 道路に足を踏み入れる。

 何かが砕ける音。潰れて、ひしゃげて、バラバラになる感覚。




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る