第4話



 そして、本番がやってきた。

 寒空の元、マフラーをつけた私は、会場をただ見つめていた。

 お守りも買った。お守りがどれくらい効果を為すものなのか分からないけれど、神でも何でも縋れるものは縋っておきたいものだ。

 そうして、私は戦場へ赴く。

 この先に何が待ち構えているのか――それは自分自身で切り拓いてみないと何も見えてこない。



10


 そして。

 あっという間に当選発表日。

 私は大学の正門に立っていた。

 何故一人で見に行かないのかと言われると、理由は二つあった。

 一つは、一人で見に行くのが怖かったから。

 そしてもう一つは……。


「あー、ごめんごめん! 待った?」

「待ってないよ。今着いたばかり」


 ミキと一緒に、この結果を確認したかったからだ。


「それじゃ、一緒に見に行こうか」


 ミキが手を差し出した。

 私はそれを見て、手を繋ぐ。


「うん。そうしようか」


 そうして、私たちは大学の正門を潜って、その向こう側にあるボードの前へと向かった。

 ボードにはたくさんの番号が羅列されており、その番号を見て一喜一憂する人間が多かった。そして、私たちもまた、その人たちに入る訳だが。


「ミキ、番号幾つ?」

「私は0498。マキは?」

「私は1340。……どうかな、あればいいんだけれど」

「マキは勉強したから、絶対にあるよ」

「そうだね。その通りだよね……」


 そうして、私はボードを見る。

 1340……私の番号を見つけ出すまで、そう時間はかからなかった。


「……あった!」

「あった? ほんとう?」

「ほら、あれ!」

「おめでとう!」

「ミキは? ミキの番号はあったの?」

「私の番号も、あったよ」


 おめでとう! と言って私たちはぴょんぴょん跳ねていた。それぐらいに嬉しいことだった。


「……マキ、忘れていたのかもしれないけれど」


 ミキは唐突に言い出した。

 そして、私はそれを覚えていた。


「覚えているよ。うん。あのことについての『返事』だよね……?」


 こくり、とミキは頷いた。


「ミキ。私は、あなたのことが――」




 春は出会いの季節。

 様々な出会いもあれば、様々な別れもある。

 そして、私は、今後ともにするパートナーと改めて『出逢う』のだった。




終わり

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比翼の鳥 巫夏希 @natsuki_miko

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