灰色の空：殺人容認高校シラハナ

【オマケ】天色空のMCP支援アプリプロフィール

　以下は一般に公表されている天色空のプロフィールである。【機密】はプライバシーや安全上の理由から管理官など、一部の人間のみが閲覧可能である。ここに記述されていないことは、管理官クラスであっても閲覧不可能な機密ということである。

天色　空　　アマイロ　ソラ：16歳女性（20XX年1月現在）

【イ】身体機能

　身長144センチ。体重36キロ。小柄、やせ型。

　栄養失調による発育阻害の可能性あり。

【イ補足-1】歩行

　歩行には安全上の理由から杖を伴う。

　杖は木製、74センチ。グリップはL字型。

【イ補足-2】五感

　視力矯正のため眼鏡着用。

　視力低下の原因は外傷によるもの。

【ロ】生命活動

　A型Rh＋。

　アレルギーなし。

　常飲している薬品はない。

【ロ補足-1】通院歴

　視力の経過観察のため、眼科へ通院中。

　処方されている薬品はない。

【ロ機密-1】通院歴補足

　心療内科への通院を求められているが、当人は応じていない。

【ハ】所属

　白花女学院1年1組。

　部活動・同好会・委員会のいずれにも現在属さず。

【ハ補足-1】外部組織

　現在、外部組織に所属している情報はない。

【ニ】家族構成

　不明。

【ニ機密-1】現住所

　白花女学院付近のマンションに一人暮らし。

【ホ】高校入学時の経緯

　11月をもって白花女学院に転入。転入に際し試験などは行われず。

　転入前の高校については不明である。

【ホ詳細-1】

　後述する『白花女学院第一事件』の捜査段階において、鉄黒高校の捜査報告会の場で彼女がMCPにのっとり殺人を犯していることが暴露された。その際、下記の機密であった事実は推測として提示されている。

【ホ機密-1】詳述

　以前いた高校でMCPにのっとり完全犯罪を遂行、その報酬として新しい姓名と戸籍を得る。MCP実験校への転入は当人の希望であり、また運営委員会はMCPが不活発であった白花女学院への起爆剤としての効果を期待し転入を許可した。

【ヘ】高校入学前の経歴

　出身中学校、および出身小学校は不明。

【A】白花女学院第一事件：朝山朱里殺人事件

　事件の詳細はアプリから閲覧可能。

　被害者死体の第一発見者として事件に関与。その後、事件解決のため主体的かつ中心的な行動を起こしたことが報告されている。

　着任した管理官、根廻吾郎により『朝山家惨状（マーダー・ケース・アサヤマ）』と通称される。

【B】白花女学院第二事件：多地山鉄子（たちやまてつこ）殺人事件

　事件の詳細は現在精査中につき、アプリでの閲覧は不可。

　本件は12月20日に発生し、特例措置を取られた。通例通りの捜査期間では12月20日から1月7日と、年末年始を挟むからである。捜査期間は12月20日から、白花女学院終業日の24日。加えて始業日の1月5日から15日の計14日間となった。その間、白花女学院における一切のMCP活動は中断され、生徒は校内への立ち入りを制限される。アプリもまた、メンテナンスの意味もあり一時停止され、捜査期間外の捜査を著しく制限することで対応した。

　これらの対応策の発案者は白花女学院在中管理官、根廻吾郎である。本対応策は運営委員会で協議され、承認されたものである。

※以下は管理官のみ、MCP運営の必要上最低限の情報を閲覧可能。

××××（現・天色空）：16歳女性（20XX年1月現在）

【イ】および【ロ】は上記参照。

【ハ】所属

　彼女はMCPの規則により姓名と戸籍を変更したため、機密扱いとして閲覧不可。

【ハ補足-1】外部組織

　少なくとも特定の危険団体に所属していたという事実はない。

【ニ】家族構成

　父、母、兄との四人暮らし。

【ニ補足-1】現在

　彼女の家族は三名とも、現在行方不明である。警察は本件に対し事件性を見い出しておらず、捜索願が出たのち、特段の捜査は行われていない。

【ホ】高校入学時の経緯

　通常の試験で入学。

【ヘ】高校入学前の経歴

　機密扱いとして閲覧不可。

【A】事件について

　彼女が立案・実行し成功させた二件の事件については機密扱いとして閲覧不可。

【B】片手で数えられる殺人鬼（キルストリークファイブ）

　実験段階にあるMCPにおいて、運営委員会の中でも直接的に教育プログラムとしての効果測定を行う部署や、管理官として現場指揮を行う部署において何名かの生徒へ綽名をつける習慣があるらしい。すべての情報の閲覧権限を持つ各部署上官らにおいては、情報漏洩を防ぐため生徒たちの本名を呼ばず、むしろそれらの綽名で呼ぶことを推奨している節がある。

　天色空は二件のMCP達成実績、および家族に対する殺人疑惑から通称（コード）『片手で数えられる殺人鬼（キルストリークファイブ）』と付されている。彼女の通称については、その来歴にまつわる情報の機密レベルの低さから聞いたことのある管理官諸君も多いだろうが、くれぐれも当人の前で通称を明かさぬように。

【B補足-1】通称監視対象（コードコーション）

　しかしこの場を借りて、幾人かの特例的人物にあらためて注意を払ってもらう必要を説いてもいいだろう。一般管理官レベルではまだ情報開示が行われていないが、そういう存在がいるということだけは各々知っておくべき特例的存在がいる。運営委員会ら上層部に通称監視対象（コードコーション）と呼ばれる彼らについて、特に注意すべきは一名である。

【B補足-2】殺させる側（ジェスター・モリアーティ）

　MCPは完全犯罪の立案と実行、捜査と解決をもって生徒の自主性を養うプログラムである。しかしそのプログラムにおいて、完全犯罪のプランを提供しているとおぼしき人物の存在が浮上した。まるでホームズの宿敵のようなその存在は、ゆえに『殺させる側（ジェスター・モリアーティ）』と通称されることとなった。

　各校へ派遣された管理官については、そこで発生した事件の状況に関わりなく、常にジェスターの存在に注意を払ってもらいたい。白花女学院の一生徒である天色空にまつわるプロフィールにこのことを記すのは、彼女が転入してから当該高校で連続して事件が発生しているからでもある。ここにジェスターの影がないか、管理官たちにはよく注意してもらいたい。