第3話 赤色自衛艦隊


 赤色自衛艦隊第三戦隊はギムナスの存在する星系、作戦呼称〈妹背牛〉宙域を航行している。

 第三戦隊は赤色日本とソヴィエト連邦との貿易航路を護衛するための戦力である。そのため主な任務は銀河に蔓延る宇宙海賊の駆逐であった。

 寺河少佐もその一人だった。

 彼女は第三戦隊の作戦参謀である。

 赤色自衛艦隊における階級は自衛隊とは異なる。ここでの自衛隊は陸上戦力としての自衛隊である。なぜなら宇宙時代において、三軍種あった自衛隊は陸上自衛隊のみとなり、それ以外の人材は海上保安庁か、もしくは航空宇宙軍としての赤色自衛艦隊に流れた。

 その時、赤色自衛艦隊はソヴィエト連邦労農赤色海軍や中華人民共和国人民解放軍海軍による直接の指導や教育のもと立ち上げられたため、階級もそれにならった。

 というのが公的な見解である。実のところ、新しい組織と階級を創るにあたり、海空自衛隊のどちらに合わせても、もしくはまったく異なる組織体制を創ったとしても、不満が噴出することは明らかだったため、それならば一新しようという指導者の思惑で決まったのたが、それは歴史書には記載されてない。

 

 寺河あや少佐は呆れている。

 対ノーラ戦争に第三戦隊が投入されようとしている現状にである。日本で流行中のオーガニックコーヒーがパックされた宇宙食をストローで口に運びながら、彼女は作戦図を眼前の個人ディスプレイに表示した。

  

 この艦隊は海賊対処用だぜ?

 戦艦クラスなんて一隻だけ、しかも百年前の旧式と来たもんだ。

 あとは駆逐艦、巡洋艦クラスが占めている。

 こんな艦隊で正規戦なんか自殺行為だぜ。

 ついに党内部でどっちかが限界に来ている。対自由西側妥協派か、対自由西側強硬派か。右翼日和見主義か、極左冒険主義か。

 けっ、知ったことじゃない。

 私たちの戦隊を最前線に投入するような馬鹿どもの下では働きたくないものだ。

 

 寺河はコーヒーを飲みきると同時に気づいてしまった。

 そうだ。ここは軍隊だった。

 日本民主主義人民共和国赤色自衛艦隊!

 帝国主義に反対し、大国主義にも反対する尊厳ある社会主義国!

 東京に囚われし労働者農民の名誉の代表にして祖国の守護者である今上天皇陛下にお仕えする唯一の実力組織!

 そんな軍隊に、私は身を捧げている。

 有能な敵にも、無能な味方にもうんざりだ。

 

 くそったれ。

 寺河は作戦を練り直すことにした。

 やはり、一撃離脱だ。一撃によって敵を破砕し、抵抗を無くさなければ。

 作戦図にはギムナスが存在する星系、妹背牛宙域が映し出されている。

 

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赤色日本は征途にあり Ghost In The Galaxy @Tito_66

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