おじさん、抱き枕系女の子

「……」

「……あ、おはようございます。もうお昼ですけど、ぐっすり眠ってましたね」

「あー、頭痛いかも……」

「確かに、昨日はすごく酔ってたみたいですからね」

「……職場の飲み会だったんだよ……」

「なるほど、ところで……――。そろそろ起きませんか? 私、今動けない状態し、ご飯の準備もできないです」

「……ごめん、ところで……――。君……誰?」

「あぁ、自己紹介しませんでしたっけ? 昨日おじさんに助けられただけですよ。一緒に寝ただけの」

「助けた? 俺が? 君を? ……ヤっちゃったってこと? それ、俺のスウェットだし……」

「昨日雨降ってましたからね。服は洗濯して乾燥機の中みたいです。着るもの無いって言ったら、貸してくれましたよ? あ、もちろん下着は着てません」

「……そう」

「あ、なんか苦々しい顔してますね? 大丈夫です。おじさんのことは誰にも言う気もありません。エッチもしてませんし」

「してないんかい」

「そうですよ? あーなるほど。だからそんな顔してたんですね。私はそんな関係になっても良いと思ってましたし、お風呂入ってこいって言われたら、そりゃあそっちの覚悟もしますよね」

「……へぇ、えらく上から目線で喋ってたんだな。ごめんねなんか、全然覚えとらんけど」

「別にいいですよ。裸にタオルのままベッドにドキドキしたまま近づいたら、おじさん寝てるんですもん。そりゃあ、唖然としますよね」

「ん? 裸だったの?」

「エッチするときは裸なのは普通なんじゃないですか? よく知りませんけど」

「まぁ、そうだね」

「スヤスヤ寝てたから、寝顔ずーっと見ちゃってたら、ベッドに引っ張りこまれちゃって」

「……おい、俺……」

「寝たふりしてたのかな? やっぱりエッチする気だったんだ。って思ってたら――」

「……思ってたら?」

「ぎゅーって抱き着かれて、そのまま、また寝ちゃってましたね」

「……」

「おじさん、私より全然大きいから、抱き着かれたら、体全部包まれちゃってるような感じでしたよ」

「……その節は、どうも……?」

「いえ、すっごく温かくて、やさしくて……びっくりしちゃいました。肩に入ってた力も全部、抜けちゃいましたよ」

「……」

「脚は絡まれて、腰は抱き寄せられて、首を腕でぐるりと回されて、抱え込まれちゃうんです」

「……はぁ、なるほど」

「まんま、今の状況ですね。この体勢がおじさんは落ち着くんでしょうか」

「……寝るときは、抱き枕使ってるしなぁ」

「なるほど、そういうことですか。手慣れてるんで、そういう人が居るのかと思ってました」

「……そんなのいないよ」

「……そうですか」

「ん? そういえば、さっき気になること言ってたな」

「なんでしょう? 今なら特別になんでも答えてあげますよ」

「裸で引っ張りこまれたって言ってなかった? それなのに、スウェット着てるよね? なんで?」

「あぁ、なるほど……それは、一度おじさんの拘束を解いてから、着替えたんですよ」

「なるほどね……それで、なんでまた、俺に抱きつかれてるの?」

「寒かったから、ですかね。おじさん温かいし、なんというかその……バカみたいに居心地よくて……」

「……バカねぇ……居心地がいいのか……これ」

「ええ、すごく。それを言うならおじさんだって……なんで私に抱きついたままなんですか?」

「……やわらかくて、いい匂いがして、落ち着く……離すのはもったいない」

「……なるほど、絶賛ですね、私の体」

「その言い方は……いやらしいな」

「男と女が一つのベッドで抱き合って寝てるんですよ? 普通、いやらしくないですか?」

「どうだろう? ……落ち着く、癒される、離したくない、これはいやらしい?」

「……どう、ですかね。耳元で囁かれるとかなりドキドキはします」

「そーですか」

「そーですよ」

「……手、どけろって言わないんだな」

「……はい、言いません」

「聞いた感じだと、君、俺の名前すら知らないだろ?」

「おじさんだってそうじゃないですか」

「……そーですか」

「はい、そーなんです」

「……もう少し、寝てていい?」

「いいですよ。私は……別に、なにも予定ないですし」

「今日は……休みだから……このまま、もう少し……」

「はい、おやすみなさい。おじさん……いい夢が見れると、いいですね……ふふふ」


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おじさんと女の子 えるむ @emuromi3

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